「完全にゲームが変わった」 指導者の暗殺に怒ったイランのイスラエル攻撃で、これから何が“始まる”のか
もっとも、イスラエルの報復があるかどうかよりも、その規模や対象がどうなるかという問題になっており、アメリカのジョー・バイデン大統領も報復そのものを自制するよう求めておらず、報復は不可避だ。 報復の内容として、最も激しいものは核施設への空爆が挙げられる。イスラエルは4月の報復で、イラン中部イスファハン州の核関連施設を守るレーダーサイトを標的にしたとされ、核施設攻撃の可能性を視野に入れていることは間違いない。
核施設への攻撃はイランとの全面戦争を招きかねないことから、バイデン大統領は核施設を攻撃しないようイスラエルに呼び掛けている。イスラエル当局者は『タイムズ・オブ・イスラエル』紙に対し、報復は「大規模な財政的損失」を及ぼすものになると言明している。イランは石油輸出などが歳入の約2割に上るため、イスラエルは石油関連施設を標的にするのではないかとの見方が出ている。 イランは長年、イスラム宗教指導者が率いる現体制への不満を原因とした反体制運動に悩まされており、石油関連施設など重要インフラへの攻撃を機に国民の不満がさらに高揚することも考えられる。ハマスやヒズボラの問題に首を突っ込み、イスラエルと戦争状態になるのは迷惑との認識が国民の間では根強いためだ。
改革派のペゼシュキアン大統領が誕生し、外相にも現実派のアラグチ氏が登用されている。アラグチ氏は在日大使時代、イランからアメリカに対してアフガニスタン問題でイスラム主義勢力タリバンに関する治安関係の情報を提供して秋波を送ったが、返答はなかったと筆者に明かしている。 ハメネイ師やイスラエルに対する強硬路線を主張する革命防衛隊と、改革派のペゼシュキアン政権の間で対立が深まる可能性を指摘するイスラエル識者も存在する。ハメネイ師はイスラエルによる暗殺を恐れて安全な場所に避難したとされるが、改革派政権との亀裂など不安材料は国内にも少なくない。