アート展示デザインの第一人者アドリアン・ガルデールが語る「美術館、須藤玲子、テキスタイル」
ー展示デザイナーという立場だからこそ得られる醍醐味ですね。
ガルデール:著名な建築家ノーマン・フォスター氏の率いる建築設計事務所「フォスター+パートナーズ(Foster + Partners)」とは、コンペティションの案から一緒に練り上げました。フランス南西部のナルボンヌに2021年に開館した古代ローマ美術の美術館「Narbo Via」です。長さ76メートル、高さが10メートルあるグリッド状の収納棚をつくり、そこに古代のレリーフを展示しています。レリーフは800近くあり、随時入れ替えが可能です。レリーフによって収納棚は「歴史の壁」と化し、来場者を古へと誘います。壮大な歴史をどう伝えるか、レリーフと対峙して、創造したプロジェクトです。独自のマルチメディアシステムも開発しました。
ー展示デザイナーとして、常に心がけていることは?
ガルデール:美術館や博物館においてもトレンドがあり、10年、20年という単位でそれは変わっていきます。だからこそ、根源的な「要」となるものをつくらないといけない。そこに私的な好みは反映されるべきではないし、それを超えた思考が必要です。また、対象となる素材の性質を知り抜いた上でデザインすることも大事ですね。
ー日本でのプロジェクトはありますか?
ガルデール:「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展」です(6月12日~7月28日 東京国立博物館 表慶館)。カルティエと日本、カルティエ現代美術財団と日本のアーティストというふたつの絆をひもとくもので、アートと宝飾を同時に見せました。日本での活動は今後もっと活発にしていきたいと願っています。