それでもビットコインはデジタル・ゴールドかを問う
現下の状況では、ビットコイン(BTC)を、特にこの暗号資産(仮想通貨)の元祖が金(ゴールド)のデジタル版であり価値の貯蔵媒体であると主張することを嘲け笑うのは容易いだろう。 BTCは現地時間8月5日、金融市場全体の急落に準じ、2月以来の安値である5万ドル(約720万円、1ドル=144円換算)を一時割り込んだが、その後、一部戻した。ニューヨーク時間の昼過ぎには24時間で9%下落し、53,387.67ドル(約769万円)となった。 ビットコイン懐疑論者にとって、今回の騰落率は往時のビリー・クリスタル(Billy Crystal)によるコメディでの決まり文句「お前の救世主は今どこにいる」を呼び起こすものだった。 「ビットコインが『価値の貯蔵媒体』だとする論は、今まさに破綻している」と、ブルームバーグ(Bloomberg)のコラムニストであるジョー・ワイゼンタール(Joe Weisenthal)氏はX(旧ツイッター)で主張した。「ビットコインは『新しいゴールド』には見えない。3銘柄のハイテク株が1着のトレンチコートでくるまれているようだ」。 しかし、この問題については更にニュアンスの異なる見解があり、それに従うならばこの比喩的な物の見方から視野を広げる必要がある。
価値の貯蔵か、質への逃避か
「価値貯蔵(store-of-value)資産と、質への逃避(flight-to-quality)資産とを混同すべきではない」とは、CoinDesk指数(CoinDesk Indices)のプロダクト責任者である私の同僚、アンディ・ベーア(Andy Baehr)氏の弁だ。「前者は長期的な期待をかける資産であり、後者はフローとスピードのある市場における資産だ」と述べられた。 「長期的」というのが重要である。 現地時間8月5日のように日経平均株価が12%下落し、1987年の「ブラックマンデー」と比較されるような雰囲気に包まれた日には、米国債は「誰もが飛びつくような、質への逃避型資産になる傾向がある」とベーア氏は言う。米国債の利回りは、価格と反対方向に動き、1月以来の低水準となっている。 ビットコインは明らかに、質への逃避型ではない。 「いまだ騰落率が高く、投機的だったりレバレッジをかけられたり、よく取引される場合の多い資産であることは間違いない」と同氏は述べる。「しかし、その希少性、持ち運びやすさ、政府や企業の政策に左右されないという特性は、時間の経過とともに、価値の貯蔵先として検討する上で実に興味深い資産となる可能性を秘めている。」 このようにビットコインを捉える投資家は、日々の市場変動からの安全な避難先としてではなく、むしろ米ドルの購買力が着実に低下していることに対する保険として考えている。ビットコインの供給量は予測可能で、2100万枚と固定されており、政策決定者の気まぐれとは無縁である。 同氏は「ビットコインを長期保有する者、中でも特に国債、中央銀行の方針、これらすべてに対して懸念を抱く者は、注目すべきなのはビットコインが値上がりすることよりも、その分母の価値が下がることの方であるかのように感じている」と語る。