【社説】政治資金の使途 古びた金銭感覚を改めよ
今国会の焦点である政治資金改革は、収入源の見直しを中心に議論されている。それだけでは足りない。 支出、使い道を改めるべきだ。国会議員はよく「政治にはカネがかかる」と言う。そうではない。「政治にカネをかけている」のだ。 公開された2023年分の政治資金収支報告書からも、その実態が分かる。報告書には政党支部や議員が代表を務める政治団体の支出入が記載されている。目につくのは、政治活動に必要かどうかが疑わしい使途の数々だ。 高額な飲食が相変わらず多い。第2次石破茂内閣の首相と政務三役計11人が代表を務める政治団体では、1回に10万円以上の支出が101件あった。支出先は料亭やフランス料理店などで、同じ日に複数の店に計100万円以上を使った事例もある。 さまざまな人と情報や意見を交わす機会は大切だが、わざわざ高級飲食店を使うのは理解し難い。 福岡県の地方議員を含む政治団体や政党支部では、コンパニオンの派遣代、地元歌手のコンサートチケット、電動キックボード、ピアノのアンプの購入が確認された。 「政治活動にどう役立つのか」と有権者に問われたら、納得する説明をしなくてはならない。 自民党派閥の裏金事件もあり、国民の「政治とカネ」に向ける目は厳しい。説明責任は重みを増している。 にもかかわらず、政治資金の公開制度を軽んじる政治家もいる。世耕弘成衆院議員の資金管理団体は、収支報告書に「贈答品等代」を金額不明で記載した。収支総額も不明で、あまりにずさんだ。 衆院議員の関連団体が、議員の親族が役員を務める企業に事務所賃料を支出していたことも発覚した。過去に問題になったことが、また繰り返されていることに驚く。 政治資金の改革は政策活動費や企業・団体献金の是非にとどまらない。資金の使途を含め、議員の意識を変えなくてはならない。 国会議員の資金源は企業・団体献金、個人の寄付、政治資金パーティー、党本部からの交付金など多岐にわたる。 議席数に応じて国から配分される政党交付金は、国民の税金で賄われている。共産党を除く9党が受け取る総額は300億円を超える。 政党や議員は、政治活動が国民の負担に支えられていることを忘れていないか。 政治とカネの事件、不可解な使途は絶えることがない。旧態依然とした金銭感覚に国民がうんざりしていることを意識してもらいたい。 政治資金の透明性を高める改革も欠かせない。監視役となる第三者機関の設置が国会で議論されている。 政治資金の不正をなくすには、国民の監視下に置くことが重要だ。その機能を十分に発揮する機関にしなくてはならない。
西日本新聞