歯の治療を受けるならクスリに注意(1)【骨粗しょう治療薬】外科処置で顎骨壊死の発症リスク
日本調剤の調査によると、日本で日常的に何らかの薬を服用している人の割合は約4割で、60代以上の高齢者になると6割以上の人が該当する。このように、持病を抱えて毎日薬を飲むのが当たり前になっている人は、歯科治療を受ける際は気を付けなければならない。 長生きしたけりゃ最後は噛む力(4)「口の衰え」がフレイルを招く 中でも特に注意が必要なのが「骨粗しょう症」の治療薬だ。骨粗しょう症は、骨の量が減って強度が低下し骨折しやすくなる病気で、日本では約1300万人の患者がいるといわれている。 治療は薬物療法が中心で、病状に応じて①骨吸収を抑制する薬(ビスホスホネート、抗RANKL[デノスマブ]、カルシトニン、SERMなど)、②骨の形成を促進する薬(ビタミンK2、副甲状腺ホルモン[テリパラチド]など)、③骨代謝を調節する薬(カルシウム、活性型ビタミンD3など)が使われている。 このうち、①ビスホスホネートなどの骨吸収抑制薬を長く服用している人は、歯科治療のリスクが高くなるという。 小林歯科医院院長の小林友貴氏は言う。 「ビスホスホネートを使用している患者が、抜歯などの外科的な歯科治療を受けると、まれに『顎骨壊死』を発症するケースが報告されています。顎の細胞や組織が死んで骨が腐った状態になり、口腔内細菌の感染によって顎の痛み、腫れ、化膿といった症状が出る病気です。悪化すると、顎の骨が折れたり、皮膚の表面に穴が開いて膿が漏出するケースもあります」 ビスホスホネートを長期使用している患者の外科的な歯科治療を行う場合、以前は「3年以上服用している人は3カ月の休薬の後で処置を行う」とされていた。 「しかし、研究が進んだ結果、現在は『低用量であれば休薬は必要ないのではないか』との見解が主流になっています。原則的に休薬はせず、口腔内の炎症を少なくするために歯石除去や殺菌などの処置を行ったうえで治療の1時間前に抗生剤を服用してもらってから外科的な治療を実施します」 ビスホスホネートなどの骨吸収抑制薬は骨粗しょう症に対して非常に有効な薬で処方されている患者は多く、長く使用している人が歯科治療を受けに来るケースは少なくないという。 該当する人が歯科治療を受ける際は、お薬手帳を持参したり、治療前に使っている薬を歯科医に伝え、指示にきちんと従いたい。