子供“無料招待”から見る日本サッカー現在地 ドイツでも類似例…未来に向けたクラブの努力【現地発コラム】
高い観客動員力とクラブの経営状況
昨今のブンデスリーガではヨーロッパ屈指の観客動員数を誇りながら、ファイナンシャル・フェアプレーの観点から厳しい運営・経営条件の下で健全経営に努めているクラブが多い。 リーグが活況を博している例を挙げると、2023-2024シーズンのブンデスリーガ1部における観客動員数1位はボルシア・ドルトムントでホームゲーム1試合平均8万1305人、2位はバイエルン・ミュンヘンの7万5000人、3位はアイントラハト・フランクフルトの5万6959人である。驚異的なのはその集客率で、ドルトムントとバイエルンはともに集客率100%、フランクフルトも99%と、ほぼ完売の動員力を誇る。 ほかにも1FCケルン(同6位/4万9829人)、ウニオン・ベルリン(同16位/2万1973人)、ハイデンハイム(同18位/1万5000人)が集客率100%を記録しており、最低のホッフェンハイム(15位/2万4559人)でも81%で8割以上を維持と、昨今のブンデスリーガは無料招待の施策を図ろうにも、そのチケットを確保できない状況が続いている。 日本の場合はサッカーという競技への認知と愛着を深める意味合いで無料招待などの施策を打ち、観客動員数の増加を目指している。一方のドイツはリーグやクラブが主導しなくても子供や大人の関心を引き、かつ各ファン・サポーターがクラブへの愛情を示す素地が出来上がっている。 プロスポーツを興行という観点で捉えた場合、日本のサッカーシーンはまだ、その前段階に過ぎないのかもしれない。しかしコロナ禍が明け、国立競技場での試合開催などの各リーグを主体にした各種施策、各クラブ独自の不断の努力、そして継続してクラブやチームを支える献身的なサポーターなどの存在によって動員数の増加が見受けられる昨今のJリーグのデータはポジティブに受け止められる。 満員に埋まったスタジアムでハイレベルなプレーが行き交うネクストステージへ。究極の未来を思い描きながら、日本サッカーの未来を切り開くアクションは続く。 [著者プロフィール] 島崎英純(しまざき・ひでずみ)/1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。
島崎英純/Hidezumi Shimazaki