ウナギの旬はいつ? 天然と養殖の違いや、鹿児島県がウナギ養殖生産量日本一となった理由とは
9割オスだった養殖ウナギが「メス」になる新技術
上柳:養殖ウナギでは、ほとんどがオスだそうですね。 高城:養殖ウナギの9割がオスなんです。 上柳:でも、味はメスの方がおいしいのですよね? 高城:そうです、メスは皮も身も柔らかくて脂のりも良く、しかも大きく育ちます。ですが私たちが食べる時は、職人さんの技術によって、オスかメスかは分からないです。 上柳:メスを増やすために、技術的にいろいろと改革された方がいらっしゃるそうですね。 高城:ご存じのように、二ホンウナギは絶滅危惧種でだんだん減っています。ウナギに卵を産ませて稚魚から育てるためにも、メスのウナギが必要です。 上柳:そうですよね。 高城:メスのウナギを作る技術はいろいろな所で研究されているのですが、私が取材させていただいた愛知県の水産試験場では、大豆イソフラボンをエサに混ぜてメスウナギを作ることに成功しました。大豆イソフラボンと女性ホルモンは、成分が似ているのだそうです。豚のホルモン剤でもできたそうですが、それだと食用になりませんからね。 上柳:さまざまな工夫や苦労があったと思うと、ウナギを食べる際にありがたい気持ちがますます大きくなりますね。
昔は東京でたくさんの天然ウナギがとれた
上柳:なぜ、土用の丑の日にウナギを食べるのでしょうか? 高城:諸説ありますが、おそらく一番有名なのが平賀源内さんのお話ですね。昔、夏はウナギが売れなくて困っていたところ、平賀源内さんの助言で「本日、土用の丑の日はウナギの日」という張り紙をして集客に成功したのがきっかけだと言われています。このウナギ屋さんのアピールは、日本で最初のキャッチコピーとも言われています。 上柳:その当時に食べられていたのは天然のウナギだと思いますが、昔、江戸の海には天然のウナギがいっぱいいたみたいですね。 高城:そうなんです。東京の街は今でも堀や水路がいっぱいありますが、あれは徳川家康の命令で造成され、江戸は水運の街となって、ウナギの住みやすい水辺がいっぱいできたと言われています。 上柳:ウナギは回遊魚ですから、江戸の海にやって来たときに『なんか居心地のいい水辺がたくさんあるな』ということで江戸湾にたくさんの天然ウナギが住みついたのかもしれませんね。ニホンウナギはわざわざ遠いマリアナ諸島で産卵すると聞きますが、どうしてそんな大変なことをするのでしょう? 高城:それが未だに謎なんですよ。 上柳:ウナギが自分で泳ぐというよりは、ただただ海流に乗るから、流されて流されてまた日本に戻ってくるのでしょうか? 高城:そうだと思います。ですから、暖流の黒潮とか対馬海流に乗って日本や中国、韓国に行くのだと思います。 上柳:だから、どこの国の海辺に着くかわからないわけですね。 高城:海流に運ばれて沿岸域にたどり着くと、ウナギは川を遡上(そじょう)しますが今は人工構造物、要するに加工石やダムとか、そういうものが壁となってなかなか遡上できなくなっています。これは天然ウナギが減っている一因と考えられています。 ――養殖技術の進歩や調理する職人の技術によって、私たちは新鮮でおいしいウナギをいつでも楽しめているが、天然ウナギは全体のわずか1%しか存在しておらず、過剰な漁獲や環境の変化が主な原因と言われている。素晴らしくおいしい食文化を次世代に伝えていくためにも、まずはウナギが非常に貴重な資源であると再認識することが必要かもしれない。
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