若年層を中心に支持が広がるアジアファッション市場の可能性 「60%」に聞く
個人の「好き」はトレンドに染まらない
ーこれから増やしていきたいブランドはどの国のものですか? 松岡:日本ブランドの需要はまだまだあるなと。私たちは日本を基盤にしている中で、日本がまだ未開拓だという意味ではグローバルからのニーズもブランドさんからのニーズも感じています。 ーアジアのブランドを日本で売ってきた「60%」ですが、日本のブランドを海外で売るために必要だと考えていることは? 真部:ブランド視点で言うなら、変にローカライズしないことじゃないでしょうか。韓国のニッチなローカルブランドが日本で売れるのと同様に、海外にも日本のコンテンツ、ファッションに注目している人はいます。地元の人しか知らないような地方のマニアックな居酒屋に観光客が「SNSで見つけて気になったから」と集まる現象と同じように、例えば日本で小規模に始まったブランドでも、SNSを通じて世界中の人にそのクリエイティブを見てもらうことができます。そのブランドに対するニーズが必ずあるという前提ですが、ブランドの発信したいメッセージをしっかりピックアップして、海外にも伝わるように発信していくことができれば、見つけてくれるユーザーは世界中にいると思います。 ー2月にローンチされる海外向けアプリで注力したいエリアは? 真部:グローバル対応として様々な言語に対応しているんですが、重点的に仕掛けようと思っているのは中華圏です。まず香港から、順番にアプローチしていく予定です。 中華圏はニーズも多いですし、物流のオペレーション的な部分でもやりやすさがあります。中でも、香港は関税が無料だったり、香港自体が多国籍で英語も普及しているので、海外の製品を越境ECで購入することに国民が慣れていたり、現地で実際に海外起点のサービスが流行っていたりと、越境ECを運営する上でとても参入しやすい環境が整っています。なのでまず香港でオペレーションや色々な施策、打ち手を試しつつ、台湾や中国本土にサービスを広げていきたいなと。もちろん中華版だけでなく英語版も作るので、様々な国からの需要を見て注力するエリアを柔軟に変えていくことも検討しています。 ー海外展開の発表に伴いリブランディングも行ったそうですね。 真部:リブランディングは、対外的に発表する目的だけではなく、社内のマインドセットとして「60%」のバリューを明確にするために行いました。「DIG IT!」という新しいタグラインを設けたんですが、「ディグる」の語源の「探す」といった意味と、「それいいね!」といった表現にあたるスラングの「dig it」を意味しています。新たなスタートラインとしてロゴも2月6日にリニューアルしました。 ー「60%」のバリューは好きなものを見つける「ディグる楽しさ」でしょうか。 真部:ニッチなコンテンツが集まっているサービスなので、目的を持って訪問するというよりは、「たくさんあるブランドの中から“探す”ことを楽しんでもらいたい」というのと「見つけ出すことの喜びをちゃんと提供したい」と考えています。そのコアバリューを社内に浸透させて、探す楽しみや見つけた時の高揚感を演出できるコンテンツやプロダクトを作っていきたいですね。 ー10代の「服好き」の価値観には新しいものをディグるという体験が魅力的なのでしょうか?Z世代は必ずしもいわゆる高級ブランドに憧れているわけではないというデータもあります。 真部:ニーズが細分化したんだと思います。右に倣えでファッションを楽しんでいる若い人ってあまりいないじゃないですか。色んな情報が溢れる中で、本当に自分にビビッときたものをその都度選択する人たちが多いのかなと。もちろんちょっと背伸びして、ちゃんとお金貯めて憧れのブランドの物を買いたいというニーズもあるし、自分だけが見つけたものをずっと愛でていたいといったニーズもある。色んな人がいるなという印象です。 松岡:1人1人の「好き」がトレンドに染まっていないというか、自分たちで決める時代になってきているなと思います。「60%」でも様々なブランドに人気が分散しているように、1人1人の好きに合うものを提供しているという点も含めてZ世代の価値観にはあっているんだと思います。