若年層を中心に支持が広がるアジアファッション市場の可能性 「60%」に聞く
勝ち筋は「ニッチ」の追求
ー60%には1412ブランドが出店とのことですが、取り扱いブランドの国ごとの割合を教えてください。 松岡那苗(以下、松岡):メインとなる韓国ブランドが7割を占め、それ以外は近しい割合ですが、台湾、香港を含めると中華圏のブランドが2番目です。 ー日本ブランドの取り扱いはまだ多くはないですね。 松岡:日本ブランドはこれから拡大していきたいと思っています。着手し始めた段階ですね。 ー日本向けのサイトでありながら、海外からのアクセスもあるんですか? 真部大河(以下、真部):現状(1月31日時点)では日本向けのサイトとして展開しているので、まだ日本がメインですが、全体の数%は海外からのアクセスです。日本語表記のサイトでも欲しい商品があれば買いたい人が多いのかなと。アクセスが多いのはアメリカと中国で、発送実績は累計で50ヶ国程度です。 ー今回、4.6億円を資金調達しましたが、2021年4月にも約1.9億円調達していますね。 真部: 2021年の調達は、主にEコマースとしてのソフトウェアを強化することと、商品ラインナップを拡大することがテーマで、エンジニアの採用や取り扱いブランド数を充実させることにリソースを投下しました。お客さんをどかっと増やすぞというよりは、サービスの質を整え、利用体験そのものを良くすることを目指しました。そのため、資金は広告やプロモーションにはほぼ使っていません。 松岡:実際資金投下を経て、取り扱いブランド数は約5倍増えました。 ー広告施策は講じなかったんですね。新興ECは集客が難しいと言われますが。 真部:今回の資金調達を機に、マーケティング施策はこれまで以上に打っていきます。ただ僕らが大切にしたいのは、「ブランドとユーザーを繋げる」ということの徹底です。それは「ブランドの良さをいかに発信するか」と「そのブランドが『60%』で買えるようになったことをきちんとユーザーに伝えていくこと」で。SNSでは定期的に「どんなブランドに入店して欲しいですか」とアンケートをとるんですが、ユーザーはかなり積極的に要望を伝えてくれます。そういった要望を適宜取り入れるとユーザーからも反応がある。「60%」というストア自体の特徴やバリューをちゃんとユーザーに伝えるように意識しているので、ユーザーの中にも「『60%』を常にチェックしておけば、気になっていたブランドがいつか入店するんじゃないか」という期待が生まれていると思います。 ー2月に海外向けのアプリも発表されますが、今回調達された4.6億円は広告意外にどのような用途で使用されますか? 真部:海外展開とマーケティング、プロモーション、あとは採用ですかね。 ー今年の採用計画は? 真部:現在従業員数はアルバイトも含めて30人程度なのですが、今年で新たに20人以上は採用したいと考えています。人材を確保し、特にプロダクト開発と海外展開を強化していく計画です。 ー世界ではラグジュアリーブランドを取り扱うECサイトの買収事案が増えていますが、ECサイトが数ある中で、60%の独自性をどう考えていますか? 真部:モール型ECや規模の大きいところだと、結局どうしても「知名度がある人気なブランド」を集めていく流れになってしまうのだと思うのですが、それだと必ずコモディティになる。僕たちはどちらかというと一般的にメジャーと呼ばれるブランドをあまり取り扱っておらず、日本にまだ市場がないインディーズブランドを中心にセレクトしています。そういったブランドが集まっていること自体が「60%」の良さとして徐々に認知を広げているので、そういう意味で突き抜けたいなと。 ー一方、韓国を中心に低~中価格帯のブランドを取り扱う新興ECサイトは多くみられます。 真部:韓国系ECも流行っていますが、別に僕らは「韓国ファッションEC」ではなく「アジアファッションEC」を作っているので。トレンドが後押しして韓国ブランドが伸びているのは事実ですが、韓国系ECとは中長期的なヴィジョンが異なりますし、これから更に差異は生まれてくると思うので、あまり他社は意識していません。とはいえ、過渡的にも競争相手が増えている中で言うと、アジアの辺境にあるニッチなブランドを多く集めているという強みを今後も伸ばしていくことで差別化していければと考えています。