眠ったままの私たちの700億円はどこに行くのか? 「休眠預金」活用への期待と課題(下)
10年以上、手付かずの「休眠預金」をめぐる動きを追う本連載。「上」(2019年1月31日配信)では、今年から民間の公益活動に活用される制度が始まった経緯や仕組みを、「中」(2019年2月4日配信)」では、制度に対するNPOなど現場の不安と期待の声を伝えました。 最終回は、年間700億円と見込まれる巨額資金活用のカギを握る「指定活用団体」に決まった「一般財団法人・日本民間公益活動連携機構(JANPIA)」(東京都千代田区)と、そこから資金を預かって現場の活動団体に分配する「資金分配団体」になり得る各地の団体の声を紹介します。 日本ではまったく新しい壮大な社会実験。その担い手たちは、いったいどのようなビジョンを持っているのでしょうか。
経団連系の団体も「地域活動重視」
「『革新性』や短期の『目に見える成果』を求める方向に偏っていて、これまで地域でコツコツと取り組まれてきた地道な活動に対する視点が欠けているのではないか」という批判の声も上がっている休眠預金制度。 大本の資金を動かすことになる「JANPIA」が、日本経済団体連合会(経団連)の強力なバックアップで生まれた団体であることも、こうした批判の声が上がる一因となっています。「大企業中心の経団連」と「年間の収益が1000万円に満たない法人が半数を超えるNPO」との間には、大きな考え方のズレが生じるのではないか、といった不安があるためです。 これらの不安の声に対し、JANPIAはどう考えているのでしょうか。 JANPIA事務局次長で事業部長の鈴木均さんは「事業計画についてはまだ内閣府の認可を受けていないため、指定活用団体申請時点での見解ですが」と前置きした上で、「指定活用団体に応募する段階から、各地のNPOなど現場で活動する団体との対話を重ねてきました。その中で、小さくても地域になくてはならない活動をしている団体への助成は欠かせないと実感しました」と話します。 JANPIAの構想によれば、初年度の休眠預金の活用額は合計で30億円余り。そのうち20億円を、地域での課題解決を重視した「草の根活動支援プログラム」に充てる予定だといいます。「(このプログラムは)20団体を目安に資金分配団体を選考し、1団体につき最大1億円を助成します。その後、さらに現場で活動する団体を資金分配団体ごとに10団体ほど選んで、最大1000万円を最長3年間にわたって助成するというものです」と鈴木さん。「1億や1000万といった金額はあくまで“最大”の数字であり、それより少ない額であっても活動内容が地域の課題解決に効果的であれば助成対象として構わないと考えます。小さな団体でも、規模に合わせた使い方ができるよう設計中です」と続けた。