眠ったままの私たちの700億円はどこに行くのか? 「休眠預金」活用への期待と課題(下)
「地方の立場」で関わり探る団体も
その「資金分配団体」には、現場の団体活動の支援とともに、国民の私財が原資である休眠預金を扱うにふさわしい運営能力も求められます。 これまでNPOなどに資金を助成したり活動を支援してきたのは「財団」、地域住民が出資した資金で設立された基金である「コミュニティファンド」、市民と行政・企業の間のパイプ役を務める「中間支援組織」などの団体でした。こうした団体は特に地方では数が少なく、規模も小さいため、多額の休眠預金を扱うとなると、どうしても「及び腰」になりがちです。 そんな中にあって、「前向きに休眠預金の活用に関わっていこう」と考える団体の一つが、北海道の中間支援NPO法人「北海道NPOサポートセンター」(札幌市中央区)です。理事の定森光さんは、まだ正式決定ではないとしながら「休眠預金が真に地域のために使われるならば、何らかの形で関わりたいと考えています。今は経営的に厳しくても、地域になくてはならない団体があります。助成金を活用して自立できるように応援することは、私たちのような中間支援組織の務め。もし、私たちだけでは力不足なのであれば、道内の他団体とコンソーシアム(共同事業体)を組むなどして、求められる体制をつくることも考えられます」と話しました。 また、ホームページなどで既に資金分配団体への応募を公言する団体もあります。愛知県の一般財団法人「中部圏地域創造ファンド」(名古屋市中区)です。 愛知県では2005年に開催された「愛・地球博(愛知万博)」の剰余金を原資に、「あいちモリコロ基金」という助成制度が17年度の募集まで運営されてきました。11年間で延べ1603件の市民活動に計10億8000万円が助成され、この制度で育成された団体は少なくありません。 そのノウハウを持つメンバーが中心となって、18年に設立されたのがこの地域創造ファンドです。理事の大西光夫さんは休眠預金制度への関わりを通して、内閣府やJANPIAがある東京からは見えにくい、地方の声を届けていきたいと意気込みます。「例えばJANPIAの提案している『災害緊急支援プログラム』では、主に発災後の復旧支援を想定しているようです。しかし、災害支援をしている地元のNPOからは『寄付が比較的集まりやすい発災時よりも、平常時の防災・減災の取り組みのための資金が必要』という声が上がっています。こうした意見も提案していきたいですね」 また、現場の活動を支援するだけでなく、地域創造ファンド自身も資金分配団体としての経験を生かして、成長していきたいと考えているようです。「資金分配団体の重責を担える団体である、という信頼を得られれば、休眠預金以外の市民からの寄付も集まりやすくなると思います。その寄付を基に、地域創造ファンド独自の助成事業を発展させ、『市民が公益活動を応援し、育てる』社会をつくっていきたいと考えています」。大西さんはこう将来像を語ります。