眠ったままの私たちの700億円はどこに行くのか? 「休眠預金」活用への期待と課題(下)
5つの助成プログラムで多様な用途に
内閣府の基本方針では「社会的インパクト評価」と呼ばれる客観的な手法を用いることになっています。これまでは助成金を使ったプロジェクトでは「Aという子ども向けのイベントを実施して、小学生100人が参加しました」などと「結果」を報告するのが一般的でした。「社会的インパクト評価」では、この「結果」が参加した子どもにどのような変化があったか(学習意欲が増加した等)という「成果」を数値にして表し、プロジェクトの内容を評価するというものです。しかし、この手法はまだ日本で普及しているとは言えず、専門的な知識と調査にかかる時間や手間が必要です。そこで、活動の成果については団体ごとの「自己評価」を基本とする考えです。 鈴木さんは「厳格に社会的インパクト評価を使うとなると、小規模な団体では事務負担が大きくなりすぎてしまいます。そこで『草の根活動支援プログラム』では、チェックリスト方式で進捗状況などを自己評価してもらい、資金分配団体と指定活用団体がその内容を共有するシステムとする予定です」と説明。この仕組みによって、小さな団体でも無理のない形で休眠預金を活用ができ、さらに助成期間中の「自己評価」を活動内容の改善や経営基盤の強化に役立ててもらうことで、助成終了後には休眠預金に頼らずとも自立できるのが望ましい、とする考えのようです。 ただ、「草の根活動支援」以外のプログラムについてはこの限りではないようです。「休眠預金がどう使われ、どのような成果をもたらしたかを説明する責任は重大です。革新的な手法の創出を重視する『新規企画支援プログラム』や、社会課題解決のための新たなビジネスモデルを推進する『ソーシャルビジネス形成支援プログラム』といった助成プログラムも別に用意しています。それらの実現可能性をみる上では、社会的インパクト評価を重視したい」(鈴木さん)。 つまり、JANPIAは休眠預金を基にした多額の資金を、小規模な活動からビジネスの手法を活用するものまで、多様な用途に投じる計画だということです。具体的には前述した「草の根活動支援」、「新規企画支援」、「ソーシャルビジネス形成支援」の各プログラムに「災害緊急支援」、「基盤強化支援」の2つのプログラムを加えた全部で5つの助成プログラムを用意。それらを企業経営でいう「ポートフォリオ戦略」のように組み合わせ、制度全体を実効性のあるものにしていこうという狙いです。 鈴木さんは最後に、指定活用団体に加えて現場の団体に直結する「資金分配団体」の動きが制度の成否を大きく左右するとの考えを示しました。「現場の団体に公平性を持って包括的な支援プログラムを提供でき、かつ適切にプロジェクトの進捗管理ができる。そうした資金分配団体と全国各地でいかに出会い、育成していくかも今後の我々の課題です」