飲酒事故で女児2人死亡も“過失”?危険運転致死罪とは?被害者遺族の怒り「殺人罪と変わりない」
この事故で2人の娘を失った井上保孝さんは、「娘たちはすやすや寝ていただけ。殺人罪と何ら変わりはない」と振り返るが、当時適用できる罪状は、業務上過失致死傷罪しかなく、求刑は懲役5年となった。しかし、「判決は懲役4年。量刑不当として控訴してくれたが棄却された」という。「殺人罪は無期懲役も死刑もあるが、業務上過失致死傷罪は何人あやめても、最高刑が懲役5年だった」。 井上さん夫妻は37万以上の署名を集め、2年後の2001年に危険運転致死傷罪が施行された。井上郁美さんは「当初は懲役15年までだったが、20年まで引き上げられた。途中からオートバイでも適用できるようになった。画期的な法改正があった25年間だ」と語る。一方で変わらないこともある。「遺族が自ら検察庁に訴因変更してくれという、危険運転致死傷罪そのものに問題がある」(井上保孝さん)。 2021年に大分市で起きた事故では、当時19歳だった男が時速194キロで走行し、男性が死亡した。検察は当初、「過失運転致死罪」で起訴したが、遺族の署名活動などで「危険運転致死罪」に訴因変更された。しかし裁判で、被告側は「過失運転」は認めているが、「危険運転致死罪には当たらない」と一部否認している。 西山氏は「遺族の声に応えられない苦しい思いをしている」と、検察官の心情を推し量る。加茂氏も「検察はよく言えば慎重だが、悪く言えば腰が引けている」と評する。裁判所の判断にばらつきがあることから、法務省はアルコール検知の量や、高速度の基準速度などを今年度中に正式決定するよう動き出している。 しかし井上さん夫婦は、定量化に不安を覚えている。「数値だけで決められるような簡単なものではない。『これ以上は一発アウト』と適用しやすくなる事件もあるが、それ未満には全く適用できない。足切りされてしまうことがないようにしてほしい」(井上郁美さん)。
罪状の違いについて、加茂氏は「過失運転致死傷罪は『うっかりミス』。危険運転致死傷罪は『わざとやった』」と解説する。法務省の有識者検討会は「最高速度の2倍や1.5倍」や、アルコールは「呼気1リットルあたり0.15グラム以上」といった数値設定案を出している。 なぜ検察の動きが遅いのか。「検察官は被害者の代弁者であるべきだ。署名活動がなくても、積極的に危険運転致死傷罪の適用を考えて、起訴するべきだ」とした。量刑については「裁判所は厳罰を考えるべきだ。10人以上が亡くなっても懲役20年というのは国民感情に反する。法改正を検討する際に、『無期刑もあり』と検討すべきではないか」と提唱した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)