イーサリアム・スケーリング、どこで間違えたのか?
ネットワーク効果で妥協
グローバルステート(すなわちイーサリアムが「世界のコンピューター」であるという考え方)の本質的なネットワーク効果について妥協していることがおそらく、モジュール型ブロックチェーンがスケーリング・ソリューションの究極の理想であるという約束を果たせない、より明白な理由の1つだろう。 第1に、レイヤー2エコシステム全体での統一された流動性の欠如は、取引、スワップ、ステーキングのために、単一のネットワークを利用しようとするユーザーにとって参入障壁となる。 アプリの創設者や開発者にとってのもう1つの参入障壁は、さまざまなチェーンにユーザーが分散していることだ。つまり、アプリの創設者や開発者は、特定のチェーンにそのアプリが必要とする適切なユーザーがいるかどうかを自問自答する必要がある。 例えば、あるWeb3アプリの創設者が取引手数料の安さと評判の高い「スケーラビリティ」を求めてチェーンXに展開しようと考えたが、チェーンXは時間をかけてDeFiユーザーにサービスを提供してきた場合、ユーザー層は適切だろうか? レイヤー2が誕生する以前は、アプリの創設者はユーザー層について疑問を抱く必要はなく、イーサリアムのメインネットに展開するだけでよかった。すべてのユーザーは、単一のブロックチェーン上に存在していた。 しかし現在では、モジュール型ブロックチェーンによって、無限のアーキテクチャの可能性が広がり、その結果、単一の独立したステートやアプリに特化したチェーンの中で、ニッチな垂直的利益に合わせたチェーンが形成されることになった。 このことは、アプリ特化型チェーンのカスタマイズにそれだけの価値があるのか、という疑問を呼び起こす。
相互運用性の複雑さ:終わりは来るのか?
ブリッジのハッキングにより、暗号資産(仮想通貨)業界全体で28億ドル(約4116億円、1ドル147円換算)以上の資金が失われている。今日、ユーザーはブリッジのハッキングに鈍感になっている。残念なことに、レイヤー2ステート断片化の現状を無視し続け、解決策のコンセンサスを得られないままでは、ハッキングは増える一方だ。 相互運用性を解決することは常に極めて困難であり、すべてに対応できる万能薬のような解決策は存在しないことに注意することが重要だ。 しかし、レイヤー2エコシステムが成長し、アプリに特化したブロックチェーンが数多く誕生している現在のスピードを考えると、相互運用性とステート断片化の問題はエスカレートし、さらに複雑化する一方である。