“ありそうでないカバン”を手がける香川発のブランド「カワニシカバン」
現在、YouTubeで登録者7万人を超えるチャンネル「カワニシカバンの休日」。自社製品のカバンの魅力を発信するだけでなく、他社ブランドやさまざまな職業の人が使っているカバンを取り上げ、忖度のないレビューをすることで人気を博している。 カワニシカバンは香川県高松市でながく愛されるものづくりを追求している工房だ。その商品の魅力は、他社にはない独特な着眼点で設計されるカバンの数々だろう。クラウドファンディングサイトであるMakuakeでの成功を皮切りに、バッグ愛好家の心をくすぐる製品を作り続けている。 同社代表の川西功志さんに、カワニシカバンの立ち上げからYouTubeでの発信まで、ものづくりに対する思いを聞いた。
下請けから自社製品の販売へ
ーこれまでの経歴を教えてください。 2015年にカバンの下請け工場として独立しました。当時は下請けの労働環境が良くなかったので、その改善のために単価を上げ、給料の底上げを図ることにしました。それが2016年の12月のことです。 このとき、社員は僕らの他にパートさんを含めて4名いました。会社として成長していくために正社員を雇い始めた途端、仕事がなくなってしまいました。単価を上げたことで、仕事が入ってこなくなったんですね。 僕が頭を下げて、仕事をくださいと言って回ることもできたのですが、自分たちで自社製品を販売していく方針を選びました。ここからカワニシカバンが本格的に活動していくことになります。 ー自社製品に舵取りし、滑り出しはどうでしたか。 ECサイトでは売れず、イベントの盛り上がりもいまいちでした。そこでクラウドファンディングに挑戦することになります。 2017年にMakuakeで初めてクラウドファンディングを行い、最終的には50個ほど売れました。手数料を払っても40万円くらいの売り上げになり、1つ8,000円ほどで販売できたことになります。これは大きな経験になりました。 下請けの仕事に比べると単価が大きく違っていたので、ここに活路があると思いました。 ー「ながく愛されるものづくり」という理念について、教えてください。 昔、美容師をしている社長さんに言われたことがあります。僕のように「日本一のカバン屋になるぞ」と突き進んでも、女性はそこにワクワクしないよ、と。話を聞いてみると、女性は未来に向かって突き進むより、キラキラしている自分がそこにいるかどうかを大事にしていると言うんですね。 ものづくりの現場では、多くの女性が活躍しています。その人たちが輝くには何ができるかと考えた結果、僕らの行動自体がながく愛されるものになる必要があると考えました。 いまではInstagramのライブをするといったところでもスタッフは生き生きしていますし、それを見たお客様がスタッフを目当てにお店に足を運んでくれるようにもなりました。そこから新たなコミュニケーションが発生していくのだと思います。 ーカワニシカバンのものづくりで大切にしていることを教えてください。 これだけは絶対にしない、というのを決めています。それは、セールと値下げです。今日買った商品が3ヶ月後に50%オフになってたら、絶対にがっかりしますからね。 そのためには、1シーズンのみの流行を追うことはせず、来年、再来年と使い続けられるデザインを考えています。それが長く愛されるものづくりの体現になります。 また、基本的に自社商品は100%修理対応させていただいています。修理の金額設定も他社さんの半額くらいにしています。