赤楚衛二の仕事論「壁にぶつかって悩んだほうが人として分厚くなれる」
赤楚衛二の人生=仕事
ドラマや映画問わず、出演作品が続く赤楚。想像もつかないほど多忙な日々のはずだが、その佇まいからは疲れなど一ミリも窺えない。「俳優の仕事をするために上京した」という彼が、仕事とプライベートの折り合いを付けられるようになったのは、どんなタイミングだったのだろう。 「折り合いって、もう付けられないものだと、僕は思っちゃってます。自分のプライベートなんて、どうでもいい……って言っちゃったら、ちょっと言葉が乱暴ですけど。僕にとっては、お芝居や作品のこと、もはや仕事そのものが生活の基準になっているんです」 20代、上京した当時から強かった感覚。いわば俳優・赤楚衛二の人生を貫く軸は、仕事以外にない。「出演した作品が褒められれば、僕のプライベートもすごく楽しい日々になる。反対に良くないと言われてしまったら、人生終わった……くらいの絶望感があります」という赤楚の語り口はユーモアを含んでいるが、本音だからこその研ぎ澄まされたシンプルさがある。 「このお仕事を始めた当初から、プライベートのことはあまり考えてきていなくて。もちろん人間ですから、ストレスを感じるときもあります。人間関係って、難しいな……とか。でも、そういったプレッシャーや困難から、逃げるのも違うと思うんですよ。やっぱり壁にぶつかって悩んで苦しむ。そうしたほうが、人としても分厚くなれるのかなって思うんです」 戦国時代の将軍とかは、自分の指示一つで何千人という市民を手にかけているわけですから……と武将の例えが出たのは、映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(2024)で坂本龍馬を演じた経験からだろうか。公の目に触れる、表舞台に立つ人間だけが背負うプレッシャー、重圧。それに背を向けるのではなく立ち向かってこそ、と言葉を重ねる赤楚の目は、澄んでいた。 「苦悩することと、徹底的に向き合う。そのほうが、なんとなくですけど、老後が楽になる気がするんですよね」と、最後までクレバーな愛嬌で場を和ませた赤楚。彼が、俳優としてはもちろん人としても愛される理由が伝わってくる時間だった。 取材・文:北村有 <作品情報> 『366日』 1月10日(金) より全国公開 (C)2025映画「366日」製作委員会