「密室化」するデジタル政策形成、事業者の意向を色濃く反映…個人情報保護法見直し巡り
個人情報保護法の3年ごと見直しを巡り、規制強化を警戒するIT業界がロビー活動を活発化させている。これに呼応するかのように、自民党デジタル社会推進本部が先月公表した提言書「デジタル・ニッポン2024」には、業界の主張とほぼ同じ内容の主張が並んだ。国民には見えにくい「密室」での政策形成について考えた。(若江雅子)
4月4日、東京・永田町の自民党本部。デジタル社会推進本部の会議で、個人情報保護委員会(個情委)の事務局幹部らは、経団連や新経済連盟、日本IT団体連盟などのロビイストらの前で議員から問い詰められていた。
個情法は附則で施行後3年ごとの見直しが定められており、現在、個情委は来年の通常国会での法改正を視野に論点整理を進めている。一方で、規制強化につながると警戒するIT業界は議員らに不安を伝えていた。その一つが、課徴金制度の導入方針だ。
課徴金制度とは、行政庁が違反事業者に金銭的不利益を課す制度で、国内では独占禁止法や景表法などには導入されているが、個情法にはない。このため現状では、重大な違反行為があっても、個情委はまず改善命令を出し、それでも事業者が従わない場合は刑事告発するほかない。法執行が個情委で完結しないため、スピード感に欠ける上、専門性に欠ける刑事司法には事案の悪質性・重大性の判断が難しい面もあり、まだ法人に刑罰が科されたことは一度もない。
一方で海外では、巨大IT企業への執行も意識して制裁金など類似の制度が強化される傾向にあり、日本でも改正のたびに導入の必要性が唱えられてきたが、そのつど頓挫してきた。
今回も業界は強く反対している。
課徴金制度を検討対象に入れた理由をたずねる議員に、個情委側は「2020年改正法の付帯決議に『課徴金制度の導入については引き続き検討する』と盛り込まれている」とこれまでの経緯を説明したが、議員らは「経済界が『今じゃない』と言っている中で続けるのか。個情委の組織体制自体がおかしい」として、批判の矛先を組織の問題に向け始めた。