「密室化」するデジタル政策形成、事業者の意向を色濃く反映…個人情報保護法見直し巡り
「個情委は独立行政委員会だからといって偉ぶって、民間事業者の話を聞かない」。議員からはこんな激しい言葉も出たという。
これには伏線があった。情報公開法に基づき開示された資料などによると、3月13日のデジタル社会推進本部で議員側から、個情委が米オープンAIに対して行った昨年6月の注意喚起(行政指導)について質問があった。行政指導の前に外部の意見を聞かないのか、という趣旨の質問に対し、ある事務局職員が「個情委は独立した機関であるため、決定は委員会内で行われる。ただし、決定に至るまでの情報収集の過程では、各省庁から必要に応じて意見を聞いている」と発言したという。
個情委は組織法上、内閣総理大臣の下に置かれているものの、職権行使の独立性が保障されている独立行政委員会であり、「法執行」の判断を独立して行うのは当然のことだ。だが、議員側はこの発言を「法執行」ではなく、「政策立案」について「個情委は『民間の話を聞かない』と言った」と受け取り、「個情法の見直しを民間の話を聞かずに進めようとしている」と批判し始めたのだった。
実は、この「民間の話を聞かない」も、業界団体が事前に議員に伝えていた個情委への不満の一つだった。個情委側は趣旨が違うと説明したが、もう議員の耳には入らない様子だったという。
4月4日の会合では、同席していたデジタル庁幹部も「個情委を作った頃は、団体と徹底的に議論をし、議員とも何度も話し合った」「今の個情委は解釈が全て保護の方向に振れている」などと同調している。
こうした批判は「個情委に任せていたら、民間の意見を聞かずに法律を厳しくする」という見方につながり、次第に「個情委がもつ『執行』と『政策立案』の機能のうち、政策立案は他に移すべきだ」との意見を強めていった。
「3年ごと見直し」の見直しも要求
個情法見直しをテーマにしたデジタル社会推進本部の会合は4月24日まで4度にわたって開かれた。
個情委への「注文」は多岐にわたり、業界が求めている「本人同意を不要とする個人データの第三者提供」の提案や、重大な個人データ漏洩事案が発生した場合の個情委への報告義務が事業者の負担になっているとの言及もあったようだ。