「密室化」するデジタル政策形成、事業者の意向を色濃く反映…個人情報保護法見直し巡り
さらには「3年ごとの見直し」を定めた個情法の附則も俎上に載った。3年ごとの見直しはICTの変化の速さに対応するために義務付けられた規定だが、その都度、規制が厳しくなると事業者が困る、というのである。
議事録によると、同席していたデジタル庁幹部は、附則の文言を「3年ごと」から「3年後」と修正すればいいのだと提案している。「『3年ごと』だと、毎回附則に書かなくても3年ごとに見直しは検討しなければならないが、『3年後』だと、改正の都度附則に書かないと検討されない」。つまり、わずかな文言修正で、一度見直せばそれで終わりにすることができるのだという、事業者のためのアドバイスのようだ。
業界の意見を反映
自民党デジタル社会推進本部は5月23日、提言書「デジタル・ニッポン2024」を岸田首相に手渡した。デジタル・ニッポンは、同本部が毎年発表している日本のデジタル戦略への提言で、政府が閣議決定する骨太の方針やデジタル重点計画に反映されることもあるなど、大きな影響力をもつ。
提言書には個情法3年ごと見直しについても約6ページにわたり盛り込まれていた。だが、意見の多くは、これに先立つ4月24日に経団連や新経済連盟、日本IT団体連盟など8団体が連名で公表した意見とほぼ同じだった=表=。
「課徴金や団体訴訟制度の導入は慎重に」「個人データの第三者提供時の本人同意原則の見直し」「漏洩報告の作業の検証」、そして、「『3年ごと見直し』自体の見直し」――。いずれの提案も、利用者保護や海外の制度との整合性の観点からは不合理な要求にもみえる。だが、個別論点については別の機会に取り上げることとして、ここで注目したいのは、デジタル・ニッポンの提言に、これらの「高めの要求」と一緒に、個情委の権限分離論が入ったことだ。提言書では、「政策立案と執行体制を一元的に担うのが現在の仕組みだが、体制の分離も含めた政策立案能力の強化が検討されるべきである」との表現で盛り込まれた。