<城が語る>ハリルホジッチ新監督誕生でもロシアW杯出場は危うい?!
ハリルホジッチ氏の経歴を見るとコートジボワールの代表監督を務めるなどアフリカのサッカーには精通しているようだが、アジアのサッカーとの接点はない。ブラジルW杯では、アルジェリアを率いて、ベルギー、韓国、ロシアとの死のグループを勝ち抜いた。「4-3-3」であったり、5バックであったり、相手に合わせて戦術を変えて、韓国にも勝ったことで「アジアのサッカーを知っている」と評するジャーリズムもあるが、それは間違っていると思う。おそらく日本人のメンタリティや文化を理解するかどうかも、実際に来てみなければわからないだろう。ハリルホジッチ氏が、ここから、どういうチーム作りをするのかもわからないが、私は最悪のケース、ロシアW杯出場もままならない可能性があると思う。 敗れたアジア杯を見てもわかるように、アジアでは、下の世代も含めて日本は負けているのだ。日本人は「うまい」、「テクニックがある」とも言われているが、それらが生きるのはボールへのプレッシャーのない場面だけ。ハイプレッシャーの中での技術は、まだまだ低い。ビルドアップの過程で中盤ではボールは回せるので、ボールポゼッションは高くなるが、肝心のフィニッシュの形を作ることができないのである。組織力が、日本の武器だとも言われているが、アギーレジャパンでは、どこでどうボールを奪い、どう攻めるかの組織の力にまとまりはなかった。 これらの課題を解決していくためには、新監督に頼るだけではなく、協会がコンセプトを打ち出して、Jリーグの問題点や、ピラミッドの土台となる世代の強化を図らねばならないだろう。海外でプレーする選手が増えていて、代表チームの問題解決に大きなプラス材料にはなるが、これも代理人がマーケットを開いただけで、スポンサー頼みの側面からも脱出ができていない。 おそらく、ハリルホジッチ氏が新監督として初采配をふるう27日、31日の親善試合に勝てば“ハリルジャパン”が熱狂的に持ち上げられ、ファンの期待値は、まるで何もなかったかのようにヒートアップするだろう。だが、そういう報道の洪水の中で、これら根本的な問題がないがしろにされてしまうという危険が潜んでいることを忘れてはならない。(文責・城彰二/元日本代表FW)