【社説】尹錫悦の逮捕失敗、第二の内乱だ
12・3内乱の主犯である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の逮捕状の執行が3日、失敗に終わった。内乱罪の容疑者を断罪するための国家捜査機関による正当な法の執行が、内乱擁護勢力によって無力化された。法治が崩壊する現場を目撃した国民は衝撃を受けた。民主主義国家において、内乱勢力がこのように堂々と法治主義を蹂躙(じゅうりん)できるのか。大韓民国の公権力はこれほどまでに無気力なのか。 尹大統領はこの日、200人規模の「人間のカーテン」の後ろに隠れて、共助捜査本部による逮捕状の執行に応じなかった。内乱失敗後、「弾劾であれ、捜査であれ、堂々と立ち向かう」と大口をたたいておきながら、実際に逮捕される状況になると、ひきょうにも隠れたのだ。尹大統領は警護処だけでなく、大統領官邸の外郭警備を担う陸軍首都防衛司令部の兵力まで動員し、自身を守らせた。12・3非常戒厳に罪のない軍の将兵を動員して軍の士気を低下させただけでは足りず、今や自身の「私兵」のように振る舞っている。もはや大統領とは呼べないほど破廉恥で醜い。 これまで裁判所が適法に発行した逮捕状にあらゆる詭弁(きべん)で言いがかりをつけてきた尹大統領は、共助捜査本部による令状執行も違法だと主張している。警察と検察はもちろん、共助捜査本部による3回の出頭要求も拒否してきた容疑者が言うことではない。すでにかなり前に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察、国防部が捜査本部を設置し、捜査権問題を解消した。検察総長まで務めた者が適法な捜査を拒否し、自身の支持者に決起を促す手紙を送るとは、国はどうなろうと関係なく、自分だけが生き残ればよいというのか。 このような内乱容疑者を守ると息巻く警護処も厳しく処罰しなければならない。特にパク・チョンジュン警護処長は、裁判所が発行した令状を見たにもかかわらず、大統領警護法上の警護区域であるとの理由で令状執行を妨害したという。先日は大統領官邸などに対する家宅捜索も不当に妨害している。警護処も憲法を守る義務がある大韓民国の公務員であることを否定する行為だ。共助捜査本部は「尹錫悦の私兵」を自任するパク処長を不寛容原則にもとづいて厳しく処罰すべきだ。 このように内乱容疑者の逮捕をめぐって警護処が強引に妨害しているのを、チェ・サンモク大統領権限代行はなぜ放置しているのか。チェ権限代行はこの日午後3時30分ごろ、経済界の新年あいさつ会に出席し、「経済が再生してはじめて大韓民国が再生すると信じて、なすべきことを揺らぐことなく推進していく」と述べた。漢南洞(ハンナムドン)の官邸で公捜処が尹大統領の逮捕状の執行を中止してから、わずか2時間後だった。チェ権限代行は、公捜処が逮捕状の執行に先立って措置を要求したにもかかわらず、「公捜処と警護処が判断すべきこと」という態度でこの問題を回避した。チェ権限代行の今の役割は、企画財政部長官ではない。「大統領権限代行」だ。現在、大韓民国で警護処の軽挙妄動を制御できる唯一の人物が、チェ・サンモク大統領権限代行だ。パク・チョンジュン警護処長ら、政府の正当な法の執行を妨害した警護処の幹部を直ちに罷免し、円満にこの問題が解決されるよう自ら取り組むべきだ。今の大韓民国経済の最大のリスクは「尹錫悦」だ。この問題を解決せずして、チェ権限代行はどのような「なすべきこと」をするというのか。国民を信じて勇気を出してほしい。 加えて、尹大統領の逮捕に失敗した共助捜査本部の無能力も指摘せざるを得ない。大統領の警護人員が200人を超えているというのは周知の事実だ。にもかかわらず、令状執行にはわずか100人を動員したに過ぎなかった。すでに3度も出頭要求に応じなかった尹大統領が、素直に逮捕に応じるとでも思ったのか。それとも、そもそも「失敗」を念頭に置いて作戦を展開したのか。 年が明けたにもかかわらず、国民は12・3内乱のトラウマからなかなか抜け出せずにいる。極右勢力は尹錫悦をイエスになぞらえたかと思えば、「また戒厳をすればよい」と第二の内乱を扇動してもいる。内乱事態は、内乱の首謀者を処断しなければ決して終わらない。「尹錫悦断罪」に国の未来がかかっている。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )