「箱根リトリート fore & villa 1/f 」に新たな温泉ヴィラ「いぶき」が開設──極上の温泉三昧
2024年8月、箱根・仙石原の温泉宿泊施設「箱根リトリート fore & villa 1/f 」に、それぞれが異なるコンセプトの7棟の温泉ヴィラ「いぶき VILLA エリア」が新たに開設した。 【写真を見る】ヴィラタイプの宿の様子をチェック!
心奪われる自然との融合
箱根は、良質な温泉と豊かな観光資源で知られる人気の地域だ。「箱根リトリート fore & villa 1/f」は、そのなかでも標高約700mに位置する、雄大な自然に恵まれた仙石原にある。春にはミツバツツジ、秋には広大なススキ草原が広がり、四季折々の美しい景観を楽しむことができる。私が訪問した7月下旬は、最高気温25度程度と涼しく、青かえでを中心とした青葉の木々が、施設全体を新緑に染め上げていた。 交通の便も良好で、首都圏はもちろん、東海や関西からも、新幹線停車駅の小田原駅で乗り換えるだけで簡単にアクセスできる。ガラスの森美術館からほど近い、約5.5万㎡の広大な森に囲まれた静謐な環境にあり、都会の喧騒から離れてゆったりと過ごすのに最適な場所だ。 「före」は、“前へ”というスウェーデン語に由来し、新しい日常と特別な体験を提供する空間を目指して建てられた。37室4タイプの部屋があり、長期滞在から週末のリフレッシュ、定宿としての利用まで、宿泊者の多様なニーズに応えられるよう設計されている。木々の隙間から部屋に入り込むやさしい光や、シンプルでモダンなデザイン、周囲の美しい自然とのつながりが、北欧リゾートにいるかのような雰囲気だ。 一方、「Villa 1/f」は、ゆったりとした空間で贅沢な時間を過ごしたい人におすすめの施設。1万5000坪の広大な敷地に18棟のヴィラが点在している。それぞれ、85㎡から150㎡のスイートで、部屋ごとに異なる趣と特徴を持っている。2名から4名までのグループに対応しており、簡易キッチンや暖炉にくわえ、大浴場と同じ温泉水を使用した半露天の温泉を完備している。 ■なにもしない 今回、私は、Villa 1/fエリアに新設された7棟のうちのひとつ「温泉スイート いぶき」に宿泊した。斜面地に立つユニークな設計が特徴で、エントランス、リビングスペース、ベッドスペース、浴室が段々状に連なり、自然の起伏を客室内に取り込んだ独特の構成となっている。内装は温かみのある木材と自然光を多く取り入れ、どの部屋も自然と調和した空間が広がっている。部屋のほぼ中心に置かれた小さな坪庭は、高い塀に囲われているので、プライバシーを確保しながらも自然と一体になる感覚を味わえる。すべてのヴィラには、時計やテレビが無く、「“なにもしない”ことを楽しんでほしい」と、総支配人の松井康弘は話す。 強羅から引いた温泉水を使用する客室温泉は、大きな窓や開口部を通じて自然光や外気を取り入れるので、屋内にいながらにして露天風呂の雰囲気を楽しめる。24時間沸かしっぱなしなので、いつでも好きな時に好きなだけ、誰に気兼ねすることもなくゆっくりと湯浴みができるのは、大きな魅力のひとつだ。 泉質はナトリウム塩化物温泉で、アルカリ性、低張性、高温泉という特徴を持っている。この泉質は多岐にわたる効能で知られており、神経痛、筋肉痛のほか、打ち身や挫きなどの外傷、慢性消化器病、冷え性をはじめとした健康増進にも効果があるとされる。 箱根リトリート fore & villa 1/fでは、食事にも注目したい。1914年(大正3年)創業の名門旅館「俵石閣」の建物をそのまま受け継いだ「料亭 俵石」での会席料理を、朝晩ともに味わえる。上皇陛下が皇太子時代にご宿泊されたこともある由緒ある数寄屋造りの空間で、完全個室での食事を楽しむことができる。 地元の食材を中心とした料理長独自の会席料理は、目でも舌でも楽しめる。また、料理長が厳選した日本酒やワインを楽しめる一皿ごとのペアリングコースもおすすめだ。とくに、日本酒のペアリングプランは見逃せない。豊富な純米酒をはじめ、IWC 2023「SAKE部門」でブロンズを授賞した「錦鯉」のほか、時期によって異なる仕入れが揃い心強いラインアップ。もちろん、好みに合わせた一種類ごとの提案を頼むことも可能だ。 箱根リトリート fore & villa 1/fは、箱根の自然の中に溶け込んだ「隠れ家」のような存在でありながら、自然、伝統と最新の施設が融合した、心身の総合的なケアを提供する特別な空間だ。時間の流れをゆったりと感じながら、新たな活力を得ることができる「自分だけの離れ宿」と呼ぶにふさわしい場所だと思う。 ■箱根リトリート fore & villa 1/f 住:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286-116 TEL:0460-83-9090 URL:https://www.hakone-retreat.com/villa/
文・松村亜希 編集・岩田桂視(GQ)