「山の日」制定記念? 高尾山&六甲山、どちらも「奥」「裏」がおもしろい
石畳や西国札所の石仏もある、変化に富んだ裏六甲縦走路
一方、阪神地方の人々に広く愛される六甲山。明治7(1874)年にイギリス人外交官アーネスト・サトウや「日本アルプス」の名付け親として知られるウィリアム・ゴーランドらが日本で初めてピッケルなどを用いた近代登山を行ったことから「近代登山発祥の山」とも呼ばれています。また、同山をホームグラウンドとしていたRCC(ロック・クライミング・クラブ)は日本岩登り界の草分け。新田次郎の小説『孤高の人』の主人公・加藤文太郎も所属しており、一目置かれる存在でした。そして六甲山もまた、身近ながらあなどれない山なのです。 こちらもルートは多様ですが、海側の表六甲に対して、裏六甲は北面の有馬温泉側。湯槽谷山、灰形山、落葉山の有馬三山を辿る裏六甲縦走路は、石畳あり西国札所の石仏あり、ブナの原生林あり岩尾根あり、滝も渕も沢もと変化に富んだ道筋です。アップダウンも半端ではなく、けっして「初心者向け」ではありません。なので、「もう少しキャリアを積んでから」という方には、六甲有馬ロープウェー駅から紅葉谷を経て六甲山頂に登るルートはいかがでしょう。ただし、段差の大きい石積みや頂上間近の急登もありますから、「もっと気軽に裏六甲の雰囲気を味わいたい」という方はロープウェーで山頂に上り、そこから紅葉谷を下る、山好きの人に叱られそうなルートも選択肢に挙げられます。 そして実は、裏六甲が最も裏六甲らしい顔を見せるのは厳寒の冬かもしれません。中腹に点在する「有馬四十八滝」と呼ばれる大小さまざまな滝群は、寒波が押し寄せ氷点下の気温が続く頃には、みごとな氷瀑へと姿を変えます。一帯を名づけて「六甲アイスガーデン」。周囲の木々も霧氷をまとい、雪を被った黒褐色の岩肌を背景にまるで墨絵の世界。そんな山域だけに雪の季節はしっかりアイゼンを装着する必要があります……と、少々先走ってしまいましたが、もちろん夏の滝や沢は涼やかだし、秋の紅葉もさらに楽しみです。 高尾山も六甲山も、いずれのルートを辿るにせよアップダウンのある山道を歩くのですから、足回りと服装はそれなりのもので整えることが肝心です。ルートの分岐も少なくないので、12500分の1程度のしっかりした地図は必携。道標は整備されていますが、地名だけ記されている場合には迷うこともあります。また、尾根道が続くルートでは、近年は両山ともトレイルランナーが増え、とくに奥高尾は走る人が歩く人より多い日もあるそう。他のハイカーとすれ違ったり追い抜いたりする際には、スピードダウンがマナーです。犬連れハイカーや頂上宴会パーティも急増しているそうですが、他の登山者に配慮し、安全に登山を楽しみたいですね。 (文責・武蔵インターナショナル)