富士通レッドウェーブの林咲希はオリンピックの悔しさを成長の原動力に「やっぱりスタンダードを上げないといけない」
「ベンチメンバーのレベルアップがすごく自分たちにとってはありがたい」
富士通レッドウェーブの林咲希は昨シーズンが移籍1年目とは思えない程スムーズにチームにフィットし、持ち味の3ポイントシュートとタフな守備を披露。チームの16年ぶりとなるWリーグ制覇に大きく貢献した。リーグ連覇を目指す今シーズンも林の重要性は変わらない。 シーズン開幕前、富士通は韓国で開催された2024ウリ銀行パクシンジャカップ、中国で開催されたFIBA Women’s Basketball League Asia 2024に出場した。公開練習後の囲み取材で、林はこれまでにない海外での実戦をチームの成長に向けたポジティブな経験だったと振り返る。「国際大会にも出場し、レベルの高いチームと試合ができることはすごく良いと思いました。また、開幕前に負けを味わえるのもすごく大事な期間で、そこで生まれた課題に今、BT(テーブスヘッドコーチ)を含めチーム全員で取り組んでいるところです」 今シーズンの富士通は、当然のように昨シーズン以上のチームになることを目指している。リーグ戦、皇后杯との二冠に注力しているが、今シーズンからリーグのレギュレーションが変わり、トップカテゴリーは昨シーズンの上位8チームによるWプレミアとなり、各4回の総当たりと過酷なスケジュールとなった。 林は「気を抜けない戦いが毎週行われます。あまり気負わずに、やるべきことをしっかりやり続けていくことがすごく大事だと思います」と語り、何よりもチーム力の底上げがWプレミアで勝っていくためには必要と続ける。「下の子たち、ベンチメンバーのレベルアップがすごく自分たちにとってはありがたいですし、大事になってきます。練習中からできているところは評価し、できていないところはしっかり指摘する。みんながこういう共通認識を持って毎試合行うことが大事だと思っています」
五輪後は「身体を動かしたくなって、3日後くらいからトレーニングを始めてしまいました」
若手に期待を寄せる林は、昨シーズンの優勝によって「みんなの意識は上がったと思います」と手応えを得ており、すでにいろいろな場面でこの成長を感じていると言う。「チームでやるべきことをできていない時、みんながそれを理解できています。試合中、私がベンチに座っている時、『今、これダメだよね』という声を聞きますし、そこはレベルが上がっていると思います」 そしてタフなスケジュールを乗り切るため、より必要となる若い力について「やっぱり自信を持って戦ってくれることが一番大事だと思います。私からは、『一緒に頑張ろう』とか『思い切ってやったらいいよ』という声掛けくらしかできないです。もし一緒にコートに立った時は良い雰囲気でその子にも入ってほしい。そのための声掛けだったりをしていきたいです」と、サポートに意欲を見せる。 林といえば、誰もが認める練習の虫だ。それはキャリアを重ねベテランの域に差し掛かった今でも変わることはない。「パリオリンピックが終わって何日かは正直、休みたい気持ちがありました。でも、すぐに身体を動かしたくなって、3日後くらいからトレーニングを始めてしまいました」と語るように、成長への意欲が衰えることはない。 「オリンピックでやっぱりスタンダードを上げないといけないと思いました。この2カ月くらいはトレーニングをしても、コンディションがあまり上がらない時期がありましたが、そこで何ができていないからコンディションが悪かったのか、考えながらやれました。この経験があったからこそ、もっと内面も含めて強化できるところを感じ取れるようになっています」 苦い思い、悔しさをさらなる進化の原動力とできる林が、今シーズンどんなプレーを見せてくれるのか。それがより楽しみになる、囲み取材での言葉だった。
鈴木栄一