「敵特殊部隊侵入」に備えた自衛隊の非現実的な訓練、秋の警備演習は日本の現実を考えていない重負担
武器で押し通すのも無理である。たしかにその場は突破できるかもしれない。ただ、いずれは自衛隊や警察に囲まれる。いずれにせよ任務達成は不可能となるのである。 第3は、攻撃対象を基地にすることは不適切だからである。それからすれば襲撃はない。 ■基地は攻撃対象にならない その理由は、まず攻撃目標としての優先度が低い問題がある。特殊部隊が狙うのは攻撃効果が高い目標、つまり戦争全体を有利にできる、または日本全体に影響を及ぼせる目標である。例えば、首相官邸やアメリカ大使館がよい目標であり、原子力発電所や静岡県の富士川橋梁群のような交通網の収束部だ。
基地は攻撃対象として魅力的ではないといってもよい。日本全体に影響は及ぼせない。しかも、自衛隊の戦闘力もあまり削げない。うまくいって5、6機の飛行機を破壊できるくらいがいいところだ。 次に、警備が厳重なため、成功の見込みが立たないことである。第2で述べたように外から警察、自衛隊の警衛、基地内の警戒員、さらに護衛艦に至っては出入り口で舷門当直も警戒している。そのすべてを潜り抜けるのは難しい。しかも、攻守いずれかが1発でも発砲すれば1キロメートル四方の警官や自衛官が押し寄せてくる。
そもそも、戦時には護衛艦や戦闘機には近づけない。まず護衛艦や潜水艦は海に出す。戦闘機も仮設土木機材で作る防空壕に仕舞ったうえで、鉄条網をめぐらして警戒員を配置する。自衛隊でもそれくらいの知恵はある。 最後に、損害が許容範囲を超える問題がある。基地襲撃となれば特殊部隊でも全滅必至となる。 果たして敵国は基地襲撃で特殊部隊を使い潰すだろうか。手間をかけて集めたうえで、苦労して日本に潜入させた貴重な兵員を成功の見込みが立たない作戦に使うだろうか。
それよりも確実な作戦に使う。破壊工作なら山奥にある送電線の鉄塔のボルトを抜いて倒すような地道な活動である。自衛隊基地を狙うとしても侵入はしない。 深夜に1キロメートルほど離れた場所からライフルを射掛ける。それにより被害確認や警備警戒となり、基地総員を夜中に叩き起こす嫌がらせである。 あるいは、スパイや扇動に転用するかだ。日本社会で自由自在に動き回れる貴重な人材である。戦闘に使うよりも、普段の情報収集や不満分子の扇動、反体制運動への援助に使ったほうがよい。敵国はそのようにも考える。