「敵特殊部隊侵入」に備えた自衛隊の非現実的な訓練、秋の警備演習は日本の現実を考えていない重負担
破壊工作の目的も、破壊ではなく負担増大である。警察の検問強化で交通や輸送を停滞させる。さらには、それにより日本経済の効率も落とす。自衛隊に後方警備を強要する。それにより前線に送り込む戦力を減らす。また隊員を疲労させて航空機や艦艇の可動率を落とす。 それが特殊部隊本来の用途である。もともと直接的な戦果をあげるための戦力ではない。潜水艦と同様に、敵国に後方警備を強要して戦力分散を図る戦力なのだ。 ■レンジャーの侵入もやめたほうがよい
敵国の特殊部隊は自衛隊基地には来ない、そう判断できる。それからすれば、今の自隊警備は過剰すぎる。警備を実施することで、本来の基地機能の発揮が損なわれる事態は間違えている。現実的にありうる事態に焦点を合わせ、それに充分に対処できる水準まで切り下げるべきだ。 とくに、警備過熱の原因となる勝負形式の演習はやめたほうがよい。現状からすれば、陸自レンジャーも勝つことにこだわりすぎている。 そのために演習でしか通用しない、非現実的もいいところの極端な、エクストリーム手法での侵入を図っている。それを続けても双方ともに訓練としての利益は生まないからである。
文谷 数重 :軍事ライター