フィリピンのジャングルでの皇軍兵士のおぞましい「人肉食行為」…「日本赤十字社」の従軍看護婦にも“玉砕”の時が
再び日赤看護婦は戦争へ動員されるのか
「赤十字は戦争を前提とした組織であったし、今もそうである。(中略)兵士が安心して戦うための後方支援、ついには戦争の歯車となってしまうこともある」(『戦争のある場所には看護師がいる』「戦時下に日本のナースたちが体験したこと」川原由佳里) そのように日赤は、日中戦争からアジア太平洋戦争に至るまで軍部に命じられるまま看護婦を戦場へ派遣し、戦争を底辺で支えてきた。そのことに対する反省がなかったために、朝鮮戦争でも看護婦派遣などで協力することになった。そうしたことは、再び起こらないのだろうか。 2004年6月、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」が成立。日赤はこの法律で、日本銀行・日本放送協会(NHK)などと共に「指定公共機関」となった。「指定公共機関は、武力攻撃事態等においてはその業務について、国民の保護のための措置を実施する責務を有する」としており、日赤の自主性が大きく制限される事が危惧される。 日赤は国民保護法の成立を受け、翌年に「日本赤十字社国民保護業務計画」を策定。「本社、支部並びに医療施設、血液センター及び社会福祉施設等の施設が一体となって、必要な措置を実施する」とし、武力攻撃を受けた際には組織を上げて政府に協力することを明確にした。 「朝鮮半島有事」や「台湾有事」は実際には米国が当事者であるため、その同盟国・日本へは朝鮮戦争の時よりも多い傷病兵が運ばれて来るだろう。そのための体制をすでに整えているという自衛隊は、昨年6月からは「自衛隊中央病院」でウクライナ軍の負傷兵の受け入れをしている。予行演習である。 自衛隊には、自衛隊中央病院と10ヵ所の地区病院がある。そこで働く「自衛隊看護師」は約1000人だという。敗戦前の「陸軍看護婦」は約2万500人、「日赤看護婦」は約1万1500人との事なので、比較すれば圧倒的に少ない。「有事」になれば、自衛隊看護師だけでなく日赤看護師も動員されるのは確かだろう。 (撮影日記載の写真は筆者撮影)
伊藤 孝司(フォトジャーナリスト)