なぜサッカーU-23日本代表は早々とGL突破を決めれた? その理由を福西崇史が語る「攻守の切り替え、そして藤田チマの存在」
そしてチームを救ったGK小久保玲央ブライアンの活躍。後半18分、DF西尾隆矢の引いた守備で相手にシュートを打たれてしまいましたが、足でいくか、手でいくか判断の難しいシュートを見事に弾いてくれました。あれが決まっていれば流れは大きくマリに傾いていたと思います。 それからアディショナルタイムのPKでの小久保の堂々たる立ち振る舞い。あれはU-23アジアカップ決勝、ウズベキスタン戦でのPKストップの経験が大きく影響していたと思います。自信満々に立つ小久保の雰囲気に相手のシェイクナ・ドゥンビアは飲まれていたと思います。もしシュートが枠に飛んでいたとしても小久保は完璧にコースを読んでいたので止めていたはずです。あの自信と集中力は見事でした。 小久保は守備だけではなく、攻撃面でも非常に効いていました。マリがマンツーマンで来ていたのでビルドアップで高井幸大と西尾がボールを持ったときに、なかなかパスコースがない場面がありました。 そういったときに相手の2トップに対して、小久保を入れた3人で数的優位を作ってある程度余裕を持ってパスを回し、その間にサイドバックが高い位置を取ったり、中盤がローリングしてスペースを作ったりと、ビルドアップのパスコースを探すことができました。 2試合通じて良かったのは、攻守の切り替えの早さ。ボールを失ったときに素早く周囲の選手がボールを奪いに寄せ、危ないエリアにカバーに入り、良い位置でボールを奪えば鋭くカウンターを狙うことができました。 とくにキャプテンのMF藤田譲瑠チマの攻守に渡るパフォーマンスは圧巻でした。危機察知能力が高く、遅れそうな場面でも判断・予測が早いのでギリギリで間に合うし、イエローカードをもらっていても積極的な守備で相手のチャンスを潰してくれました。彼のプレーでチームを大きく引っ張ってくれたと思います。 攻撃でも鋭い縦パスが非常に効いていたし、格の違いを見せつけるほどのクオリティで、藤田がアンカーにいることで山本も非常にやりやすかったと思います。 気になった点を挙げるとすれば守備ラインの守りの部分。ここまで失点をゼロで抑えられていることはチームにとって非常に大きな自信になっていると思います。ただ、1戦目、2戦目を通じて守備での間合いの寄せ方、下がり方のメリハリはもう少し早く判断しなければいけないと感じました。 裏を取られるのが怖いというのはわかりますが、チャレンジ&カバーで一人は球際に激しくいかなければいけない場面があります。2戦ともにそこで行けずに遅れてしまう場面がありました。パラグアイ戦では相手が一人少なかったことで遅れても対応できましたが、マリ戦ではチャンスを作られました。細かい部分ですが、メダルを狙うのであればここから修正する必要があると思います。 まもなくイスラエル戦を迎えますが、得失点差的に1位通過がほぼ確実という状況で、日本がどんなメンバーで臨むか。タイトなスケジュールの大会なので、決勝トーナメントを見据えてある程度のターンオーバーは大事なことです。 日本はこの2戦で誰が先発し、誰が途中から出てもチームのクオリティが落ちない厚い選手層を見せてくれています。2連勝してできたアドバンテージをうまく活用してイスラエル戦に臨んでもらいたいと思います。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜