マラソン記録「2時間3分2秒」が“世界歴代2位”になれないのはなぜ?
ランニング人口1000万人ともいわれる日本、「マラソン」と名がつく大会は1年中開かれていますが、やはりお楽しみはこれから。ほぼ毎週末大小さまざまなレースが開かれる、マラソンの季節到来です。 そのマラソンにちなむ2014年最大のニュースといえば、9月28日の第41回ベルリンマラソンで、史上初となる2時間2分台の世界新記録が生まれたことでしょう。デニス・キメット(ケニア)の2時間2分57秒は、昨年の同大会でエマニュエル・ムタイ(ケニア)がマークした世界記録を26秒更新したもの。ちなみに、今年は2位に甘んじたエマニュエル・ムタイの2時間3分13秒も、歴代2位の好記録でした。 ふりかえれば、マラソン史上初の2時間3分台も、4分台の記録もベルリンで達成されています。前者は2008年に「皇帝」と呼ばれたハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が記録した2時間3分59秒、後者は2003年のポール・デルガド(ケニア)の 2時間4分55秒です。ベルリンのコースはフラット、気候的にも走りやすい時季に開催されるため、「世界一の高速コース」とも呼ばれます。男子マラソンの歴代上位7位までの記録はいずれもベルリンで達成されており、日本人女子の上位3傑(野口みずき、渋井陽子、高橋尚子)もベルリンでの記録です。記録を狙えるコースに、記録を狙える選手が集まる。「世界記録のスパイラル現象」とも言えそうです。
先に、今年のベルリンでエマニュエル・ムタイが記録した2時間3分13秒を「歴代2位」と書きましたが、実は2011年のボストンマラソンでジョフリー・ムタイ(ケニア)が打ち立てた2時間3分2秒という記録があります。ゲブレシラシエのもつ当時の世界記録2時間3分59秒を大きく上回り、「2時間2分台への扉を開いた」とも評された快挙。今年、キメットが世界新記録を樹立するまで、ずっと「世界最速」であり続けました。 ただし、この記録は「非公認」。国際陸上競技連盟(IAAF)は、ロードレースのコース基準を(1)スタートとゴールを結んだ直線距離がコースの50%を超えないこと(フルマラソンでは21.0975km)、(2)高低差が1kmに対して1mを超えないこと(同42.195m)、と定めているからです。片道コースとはいっても基準を満たしている東京マラソンなど他の国際大会と異なり、ボストンはスタートとゴールの直線距離が総距離の91%。全般に下り基調で、30km過ぎの心臓破りの丘もスタート地点よりずっと低いため高低差は140m。つまり、どちらの基準にもあてはまりません。