収入は増えないのに物価は上昇し続ける…国民にだけ我慢を強いる自民党政権の「無責任」を許していいのか
■「物価高を上回る所得増」の3つの問題点 2024年だけでも、1月30日の施政方針演説、3月28日の二四年度予算成立後の記者会見、5月31日の首相官邸での大手企業経営者との懇談、7月19日の軽井沢での経団連の会合、7月25日の首相官邸での記者会見などで、岸田首相は「物価高対策としての賃上げ」や「物価高を上回る所得増」という政策をアピールしました。 けれども、一見もっともらしいこの政策には、重要な「欠落」が三つあります。 まず、月給制でない事業者や年金生活者の状況改善に何の効果も期待できないこと。 次に、経済的な余裕がない企業(特に中小企業)は政府の要請に従えないこと。 そして、政府が企業に「賃上げを要請」すれば、企業側は「人件費の上昇」を理由に商品の価格にそれを転嫁して、さらなる「物価高」を引き起こすという本末転倒。 ■収入増の取り組みが物価高を悪化させてしまう 月給制の正社員や非正規社員とアルバイトは、企業側が設定する月給や日給をアップすれば単純に「賃上げ」が実現しますが、個別契約の自営業者や個人事業主、商品の売り上げで収入を得ている店舗などは、それほど話が単純ではありません。 岸田首相が特定企業に「賃上げ要請」を行っても、個別契約の報酬額はさまざまな理由で総合的に決定されるもので、一律にいくらアップという月給制のような方策は適用できません。 そして、店内で作った食品や製品を店頭で販売する店舗の場合、収入を増やすには商品の価格を上げるしかなく、それでは逆に物価高をさらに悪化させる結果となります。 不思議なのは、こうした「物価高対策としての賃上げ」が内包する大きな問題点について、欠陥だと指摘する声がメディアの報道に見当たらないことです。新聞社やテレビ局などで働く記者たちは、月給制の正社員ばかりなので、月給制でない形態の労働環境や年金生活者の暮らしについては、特に関心がないのかもしれません。 そして、テレビのニュース番組や情報番組は、効果がない政府の物価高対策を「欠陥」だと批判する代わりに、「物価高の状況を乗り切るための我慢と工夫」を国民側に呼びかける、まるで戦時中のような内容ばかりを放送しています。