SAPIXが考える子どもの「算数スランプ」克服法 「算数」と「受験算数」の違いを理解 “猛特訓”は逆効果
間もなく中学受験が始まります。中学受験を予定している家庭の中には、子どもの算数嫌いや苦手意識、またテストや模試の点数が上がらないことにモヤモヤしている保護者の方も多いのでは。 教育ライターの佐藤智さんは、受験のために先取り学習に力を入れたり、解法だけを丸暗記したりすると算数嫌いになりやすい、と指摘。難関中学の受験指導で知られる進学塾・SAPIX小学部で算数を担当する溝端宏光先生と小林暢太郎先生から話を聞き、長い目で見て算数と付き合っていくためのポイントを著書『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること』にまとめました。 【イラスト】子どもに苦手な算数を克服させるため、保護者がやらない方がいいこと
本記事では同書より一部を抜粋し、算数を苦手にさせないために保護者が理解しておくこととして、「算数と受験算数は違う」「算数はメンタルが大事な教科」の2つをご紹介します。 ■タイムリミットを意識するかしないか 保護者の中には、子どもが算数のテストを全然解けず、終了時間が迫ってあせる感覚から「算数が苦手」という意識を持っている人も少なくないかもしれません。 しかし、それは算数のごく一面しかとらえていないので、もったいないことだともいえます。
ここで重要なことは、「算数」と「受験算数」の違いを理解することです。これらは同じ算数でも考え方が異なります。 算数の問題の解答を導きだすには、いろいろなアプローチが許されています。元来、「こんな方法があるかな?」「これも試してみようかな?」とトライアンドエラーをする教科が算数です。 だから、解法が見つかるまで2時間でも3時間でも考える子は歓迎されるべきです。 もっと極端なことを言えば、計算問題に対してもパパッと答えるだけでなく、「1つひとつ数えて答える」といった取り組みだって、認められてもいいかもしれません。
しかし、多くの大人が習ってきた算数はそうではありませんでした。それは、受験算数を意識した勉強法だったからです。受験算数になると、どうしても「時間の制約」の問題が生じます。 ここでいう時間の制約には、2つの意味があります。1つは、試験時間です。 制限時間内にテストを終わらせることを考えると、同じ「解く」でも短時間で解ける方法を身につけなければいけません。 もう1つの時間制約は、受験時期までに解けるようになる必要があることです。