「プラモデルはやっぱり面白い」スペシャル 『007/ゴールドフィンガー』公開60周年記念 映画に出演した中で間違いなく世界で一番有名なクルマ物語
では撮影用に使用されたもう一台はどこにあるかというと、これまたコレクターのハリー・イエッギーという人物が購入し、まだそのまま所有している(らしい)。そんな撮影用に使用されたDB5だが、スイスのロケでは早々にクラッチトラブルで走行できなくなってしまい、大慌てでもう一台をスイスに運んで撮影したとか、あまりにもステアリングが重く速く走れなかったため、実際の「ゴールドフィンガー」におけるカーチェースシーンの映像は早回し(実話)になっているなど、苦労は絶えなかったようである。
オッドジョブはもっとも有名なボンドの適役の一人で、「アー」としか発しない(つまりスペクターに出てきたデーブ・バウティスタは、ハロルド坂田へのオマージュと考えてよい)。ハロルド坂田はハワイ生まれの日系アメリカ人で、重量挙げオリンピックメダリスト。またプロレスラーとしては、トシ東郷の名前でアメリカにおいて悪役として名をはせたが、わが国においても、力道山をプロレスに引き込んだ人物としても知られている。 プラモデルの下は1964年7月7日(木曜日)にスイスにおいて行われた、有名な峠場面の撮影風景。アングルを調整し、ゴールドフィンガーとオッドジョブが立っているロールス・ロイスを眼下に、手前にショーン・コネリーとDB5が映るように高い足場を組んで撮影している。
また映画中、スイスにある「ゴールドフィンガー」の黄金工場のシーンは、イギリスのパインウッドスタジオで撮影されているが、この際、DB5はエンジントラブルになってしまい3気筒で走行。あまりの遅さから後ろから別の車で押して撮影したというのだから、裏側など知らない方がよかったという話でもある。また後方から煙幕をはきながら走るシーンも、小道具さんがトランクルームに乗り込んで煙の特殊効果を人力で演出したが、煙の対流が悪く危うく窒息しそうになったという。映画撮影というのはなんとも大変なものである。