「障害を生む環境なくす」デフリンピックを応援、デフサッカー前代表監督・植松隼人さん
「デフリンピックを通して歩み寄れる社会を目指したい」。サインフットボールしながわ(東京都品川区)代表兼コーチでデフサッカー男子日本代表前監督の植松隼人さん(42)。11月に開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」を啓発する同区の「デフリンピック認知度120%プロジェクト」サポーターとしても活動している。地元である同区から、デフリンピックの魅力の発信や当事者視点を持つ街づくりに尽力している。 ■サッカーで手話上達 生まれつき重度の感音難聴を持つ植松さん。日頃は手話や口の動きなどから読み取る「口話」でコミュニケーションを取っている。サッカーを始めたのは友達に誘われた小学5年生の時。大学生になりデフサッカーと出合い、平成22年からデフフットサル代表として国際大会に出場した。引退後、デフサッカーの日本代表コーチを経て29年監督就任。令和5年のデフサッカーワールド杯では史上初の準優勝へと導き、昨年3月勇退した。 「サッカーはコミュニケーションスポーツ。デフサッカーは試合中に言葉が見える」。プレー中は補聴器などを外すため、声も出すがアイコンタクト、ジェスチャー、手話が大事なコミュニケーション手段となる。 日常的な手話は使えていたが、スポーツの場で激しくコミュニケーションを取ったりするのは不得意だった植松さんは、デフサッカーの仲間に教えてもらうことで上達。プレーが円滑になるだけでなく、日常の話題や悩みなどを分かち合えた。「手話という言語での何気ない会話は結束力の大事な要素」だと実感した。 日本代表では久々のろう者の監督であり、「実力をもっと発揮できるやり方がある。気付けるのは自分が聞こえないから」と、当事者ならではの視点を戦術へ取り入れた。 競技をただ知るだけではなく、より深く知ってもらいたいと認知度120%を掲げる同区のデフリンピックサポーターとして、イベントや学校での講演会に積極的に関わる。「当事者が発信しないと」とSNSも積極的に活用している。 ■聴者と障害者が一緒に