厳しすぎるEV義務化基準に英国老舗自動車ブランドが対処不能、世界のEV市場は中国の激安メーカーが手中に収めるのか
■ 非ZEVの乗用車1台ごとに最大1万5000ポンドの罰金 義務化は段階的に引き上げられ、30年には乗用車の80%、小型商用車の70%とされ、35年にはガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売が完全に禁止される。規制に違反した場合、メーカーに非ZEVの乗用車1台ごとに最大1万5000ポンドの罰金が課せられる。 現在1ポンド=190.79円なので、日本円にすると286万円という馬鹿げた金額だ。 プラグインハイブリッド車(PHEV)を含むハイブリッド車(HEV)は短距離なら電動走行が可能だが、内燃エンジンを使用するため二酸化炭素を排出する。したがって、これらの車両は「ゼロ・エミッション」の定義から外されている。 小型商用車の場合は24年に9000ポンドだが、翌年から1万8000ポンドに引き上げられる。メーカーはZEV義務化目標を超過した場合のクレジットを他社から購入することや、将来のクレジットを前借りすることも可能だ。しかし、EV移行には大きな課題が残されている。
■ 英国市場からの撤退は必至 充電インフラの整備が遅れている上、消費者が内燃車からEVへ迅速にシフトするかも不透明だ。公共充電設備の信頼性や料金の高さが課題とされ、自宅充電が難しい場合、コストが膨らむ可能性がある。地方と都市部でのインフラ格差も懸念材料だ。 英自動車製造販売者協会(SMMT)はZEV義務化初年度の今年60億ポンド、さらに来年もっと大きなコストを強いられるとの分析結果を発表した。昨年2月時点の予想に比べ、今年のEVの乗用車と小型商用車の新車登録台数は11万6000台減少する見通しだ。 昨年からEVモデルの選択肢が30%増え、メーカー割引は40億ポンドに達するとみられているが、消費者の需要を十分に喚起できていない。英国の自動車業界は事業継続と雇用に壊滅的な影響を受ける恐れがある。このためZEV化を進めるには政府の緊急介入が不可欠と訴えている。 EVの乗用車は22%に届かない可能性が高く、目標未達分だけでも18億ポンドのコンプライアンス費用が発生する見込みだ。EV需要の低迷を受け、世界のメーカーがすでに減産に踏み切る中、これほどの規模の出費が発生すれば英国市場からの撤退を余儀なくされるのは必至。