「売掛金制度はホスト自身も被害者」歌舞伎町に通うライター佐々木チワワが語る、ホストクラブの実態 #ニュースその後
売掛金制度が廃止されれば、ホスト通いの女性もホスト自身も救われる
――ホストクラブのあり方や売掛金制度について国会でも議論されるくらい社会問題化していますが、それに対してはどう思いますか。 佐々木チワワ: 最近、注目されるようになっただけで、ホスト業界の売掛金制度は何十年も前からあることなんです。ホストだって売掛を払ってもらえなかったら、自分の給料から全部引かれる。でも、売掛させることで「売掛を回収するために仕事を頑張らなくちゃ」と思う。女性側も「今、彼にお金を使えばNo.1を取らせることができる」って思う。売掛金制度はその瞬間風速を男女ともに最大化させるためのシステムであり、これをやるしかないって追い込むマニュアルみたいな文化であることも間違いなく事実です。結局、経営者が得する制度なんですよね。 若年女性が被害にあっているといわれますが、実はホストも被害者なんです。ホストは18歳から20代前半の子が多い。若い彼らが、一晩で200万円とか、人に借金をさせるわけです。しかも自分が一緒にその借金を背負うかもしれないのに。もう感覚がおかしくなっていますよね。売掛金制度の廃止は当然の流れだと思いますね。 ――ホストクラブに通う女性だけでなく、そこで働くホストたちも被害者の側面があるんですね。 佐々木チワワ: そうですね。ホストって、感情と人生と時間を全部買おうと思えば買えちゃうものなので、いわゆる推し活みたいな一方的にお金を払うことに当てはまるものじゃないっていうところがややこしいんですよね。 中には、きっとお金で女性から性支配を受けているホストもいるんですよ。「お金を払ってるのに、何で私を抱いてくれないの」って言う人もいるけれど、本来の推し方としてこれはおかしいし、推しに加害していますよね。男性の性被害は声を上げにくい現状もあるので、表面に出てきにくいだけだと思います。 若年女性だけが被害を受けているかというと、そうではない。売掛金があっても、女性も「ホスト側が先にサービスしてくれたら、お店でお金使ってあげるかも」と駆け引きして楽しんでいる部分もある。そのためにホストは頑張って身体をすり減らしているという実態もありますからね。 だから、若年女性が被害者になるから売掛金制度反対というわけではなくて、ホスト側にも客側にもメリットが無いし、売掛金制度が無くても持続可能だから廃止した方がいいと思っています。どんな世界であっても現行法に反したものや明らかにモラルを欠いているものは排除しないと存続できません。ホストはクリーンだと言うのなら、より良い業界にしていこうという感覚で動いてほしい。ただ、売掛金制度がなくても自ら勝手に風俗をやって現金を用意する客も出てくると考えられるので、客側も当たり前にルールやモラルを守っていかなければならないと思います。 ---- 佐々木チワワ 2000年、東京生まれ。ライター。高校1年生の大みそかに歌舞伎町を訪れて以来、歌舞伎町で働く夜職の人々に惹かれ、自身もひと通りの職種と幅広い夜遊びを経験。現在は慶應義塾大学に在学し、繁華街の社会学を専攻するかたわら、雑誌やWEBで夜の街に関する記事を執筆。著書に『歌舞伎町モラトリアム』『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~』などがある。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)