『伊藤潤二展 誘惑』世田谷文学館で開幕。『富江』『うずまき』描き下ろしも展示する初大規模展をレポ
漫画家・伊藤潤二の初の大規模個展として、東京・世田谷文学館で『伊藤潤二展 誘惑』が開催されている。 【画像】メインビジュアルの前で質問に答える伊藤潤二 『富江』や『うずまき』などのホラー作品で知られ、国内外でファンを集める伊藤。本展覧会では、漫画原稿約320点、本展のための描き下ろし3点を含むイラスト約100点をはじめ、挿絵や下絵、書籍、少年時代の創作資料など約600点が展示されている。 開催に先駆けて行なわれた内覧会には伊藤も登場し、「見どころもたくさんありますので、ぜひ楽しんで見てほしい」と呼びかけた。世田谷文学館と朝日新聞社主催で、9月1日まで。 伊藤のコメントを交えながら、本展をレポートする。
「37、8年、思えばあっという間」。描き下ろしにも言及
本展は、5つの章から構成されている。入り口の序章では、描き下ろしのメインビジュアルが鑑賞者を出迎える。伊藤の代表的な作品『富江』の登場人物・富江が不敵な笑みを浮かべ、こちらに視線を向けているイラストだ。内覧会では、伊藤はその大きな立て看板の前に立って質問に答えた。 メインビジュアルについて問われた伊藤は「富江っていうのは体をバラバラにされると、それぞれからまた別の富江が生まれてくるっていう設定なんで、これも多分、生まれつつある富江を一見かわいがってるような感じで描いてます」としたうえで、「でも本当は、それぞれ自分だけが本物の富江だと思ってますんで──別の富江は認めないっていうそういうキャラクターなんで。なんかたくらんでるんだろうな、って。そういう絵ですね」と説明した。 また、600点という膨大な数の展示を前にして、「37、8年描いてきたんですけど、思えばあっという間ですね。それぞれ時間をかけて描いた作品ですので、思い入れはあるんですけども、あっという間だった」と振り返ったうえで、「ただ今回、美しく額装されてまして、実際よりもよく見えましてですね(笑)見栄えが良くなってて、ちょっとほっとしました」とユーモアも交えて語った。 また、伊藤のアイデアから設置されたという『死びとの恋わずらい』にちなんだ恋みくじについて「『死びとの恋わずらい』っていうのが、おみくじでいう大凶みたいな邪悪な少年の話なんで。私もちょっと見させてもらったんですけど、大凶とか凶の数が多いような気がしています」と紹介した。