「筋トレのしすぎで背が伸びなくなる」は本当? 松坂大輔氏を指導した専門家が語る理想のボディーの作り方
「炭水化物抜きダイエット」は、実は脂肪を取らないとむしろ逆効果に
1日30分、週に90分であれば、忙しい現代人であっても続けられそうだ。具体的には、どのようなトレーニングメニューを組めばいいのだろうか。 「時間帯はたんぱく質が使われやすい朝の方がいいと言われていますが、そこまで気にする必要はないでしょう。空腹状態だと筋肉が分解されてしまうので、食後2~3時間がたったタイミングがベストです。まずは足腰、スクワットはやっておきたいですね。ダンベルなどを持ち負荷をかけた状態で、10~15回を3セット。次は腕立て伏せがおすすめです。10回が理想ですが、できない場合は膝をついてやってもOK。この2つを続けていればだいぶ変わってくると思います。プランクは鍛えられる場所が少なく、ある程度続けると楽にできるようになってしまう。トレーニングをしたことがない方や、高齢者向けのメニューと言えます。 終わってからはできるだけ2時間以内に、卵かけご飯など、たんぱく質とグリコーゲン(糖質)を摂るようにしましょう。プロテインは牛乳や大豆などからたんぱく質のみを取り出したもの。トレーニング中は筋肉の分解と合成が同時に起こっており、たんぱく質は分解を抑え合成を高める材料になります。筋トレ中や直後に飲むのが効果的ですが、40グラムほどで効果は頭打ち。飲み過ぎれば余分なカロリーになるだけで、飲めば飲むだけいいというものではありません」 食事面ではたんぱく質だけでなく、脂質を取ることも重要だ。 「肉や魚、卵などのたんぱく質を豊富に取ることが大切です。体重1キロあたり2グラムを目安に取るようにしましょう。ただ、筋肉の合成にはたんぱく質だけでなく脂肪も必要。トータル摂取カロリーの25%くらいは脂肪でも構いません。外食だとサーモンやマグロ丼、ラーメンならチャーシュー麺などがいいですね。揚げ物やアルコールはできるだけ控えた方がいいでしょう。 何年か前に炭水化物抜きダイエットというものがはやりましたが、あれは効果があると思います。ただ、炭水化物を控えるだけでなく、しっかりと脂肪を取らないといけないことがあまり知られていない。グリコーゲンの代わりに脂肪から作られるケトン体がエネルギーとなるのですが、しっかり脂肪を取っていないとたんぱく質がエネルギーとして消費されてしまいます。炭水化物抜きダイエットをやるなら、例えばステーキなど、しっかりと脂肪もあるものを食べた方がいいのです」 筋トレやダイエットに関しては、さまざまな俗説も存在する。「有酸素運動をしすぎると筋肉が落ちる」「成長期に筋トレをすると背が伸びない」「筋トレをしすぎると寿命が縮む」といったものだ。 「有酸素運動で筋肉が落ちることはありませんが、分解と合成のうち、分解の方が強くなってしまい、ウエイトの効果が落ちることはあり得る。有酸素運動にもいい効果は様々ありますが、筋肉のことだけを考えればやりすぎは良くないでしょう。ちなみにダイエット目的で両方やる場合は、先に有酸素から始めるのがおすすめ。ひと昔前は逆と言われていましたが、有酸素の方が運動後のカロリー消費が少ないため、ウエイトを後にした方が効果が長続きします。 筋トレのしすぎで背が伸びなくなる、寿命が縮むといった話は、エビデンスもなく、眉唾ものと言わざるを得ないでしょう」 2023年に厚生労働省が改訂した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」では、成人、高齢者ともに「週2~3回」の筋力トレーニングを推奨している。山本氏のような鋼の肉体には及ばずとも、無理のない範囲で体を鍛えていきたいところだ。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム