生産性アップのためのITツールこそ“無駄の原因”だった?
現代の職場では、生産性を向上させるさまざまなツール(以下、生産性ツール)が活用されている。しかし皮肉なことに、従業員の業務負荷は増え続けており、「真の効率化」はますます遠のいているようだ。それはなぜなのか。
「生産性ツール」を導入しても生産性は上がらない訳
生産性ツールを導入しても業務負荷が増えるといった状況が生まれる背景には、ツールが設計された目的と、実際の使われ方に、ギャップが存在することが挙げられる。 現代の従業員は、通知が届くたびに作業を中断するというリアクティブ(受動的)な働き方をしており、この状況はプロアクティブ(能動的)な仕事の妨げとなっている。業務の合理化を目的としたツールが、逆に業務を複雑化してしまっているのだ。このような背景から、生産性ツールの在り方を再考する必要があることは明らかだ。 シュチェパンスキー氏の見解によれば、近年のPCにおけるユーザー体験(UX)は、生産性を中心に据えて設計されたものではない。むしろ、1台のコンピュータで複数のプログラムを同時に実行するという、コンピュータサイエンスの問題解決に焦点を当てて開発されている。そのため、単に生産性ツールを導入するだけでは、マルチタスクによってエンドユーザーに過度な負担がかかっている状況を解決するのは難しいだろう。 ある研究によると、われわれは業務で約100種類の異なるアプリケーションを使用しており、それらの間を1日1000回ほど行ったり来たりして、膨大量の情報をコピー&ペーストしている。つまり、情報をある場所から別の場所へ移動させるといった、非生産的な作業を繰り返しているだけとも言える。 われわれが取り組むべき課題は、技術が人間のニーズにどのように応えているかを改めて見直すことだ。つまり、デジタルツールと人間とのインタラクション(相互作用)を強化するために、より統合されたアプローチへ転換していく必要があるということだ。 シュチェパンスキー氏は、人類が火を発見した時代に例えて、「重要なのは火をどれだけ多く持っているかではなく、その火をどのように使うかだ」と話す。暖を取る、料理をする、明かりをつけるといった使い方が、火を価値あるものにするということだ。 人工知能(AI)技術があらゆるシステムに組み込まれるようになった近年、この考え方は特に重要になっている。AI技術は情報検索やコンテンツ生成を支援するための個々のツールとして機能している。AIツールは非常に便利な反面、他のアプリケーションと柔軟に統合されているとは言い難い。そのため、エンドユーザーはいちいちアプリケーションを切り替えてプロンプト(指示文)を入力し、その結果をコピー&ペーストするといった手作業が増えてしまう可能性がある。 ※本記事は米Informa TechTargetの記事を翻訳・編集したものです。
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