韓国がなぜウクライナに兵器を供与しなければならないのか
クォン・ヒョクチョルの「見えない安保」
ウクライナのルステム・ウメロフ国防相を代表とするウクライナ特使団が27日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、シン・ウォンシク国家安保室長、キム・ヨンヒョン国防長官に会った。ウクライナ特使団が兵器供与を要請したという報道が相次いだが、韓国大統領室と国防部は具体的な面談内容を明らかにしなかった。 ウクライナは、北朝鮮のロシア派兵を韓国とウクライナにとって安全保障上の共同の脅威とし、韓国に兵器供与を要請している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先月31日(現地時間)、ソーシャルメディアへの投稿で、「我が国の代表団がまもなく韓国を訪れ、兵器について話し合う」とし、「砲兵、防空システムなどを(要求事項として)念頭に置いている」と述べた。 ウクライナは韓国の同盟国でもないのに、なぜ当然の権利を行使するかのように兵器の請求書を突きつけるのだろうか。韓国国内でウクライナへの兵器供与に賛成する側は「韓国は朝鮮戦争当時、自由世界の支援で生き残った。韓国が困難な状況に置かれているウクライナを積極的に支援してこそ、朝鮮半島有事の際にも自由世界が韓国を再び助けるだろう」と主張する。 冷戦当時にソビエト連邦の一員だったウクライナは、朝鮮戦争の時、共産勢力の侵略に対抗して戦ったのではなく、共産侵略勢力の一員だった。ウクライナ戦争前まで、韓国で見られる旅行ブログなどにはウクライナのキーウにある戦争博物館の対外戦争室に展示されたウクライナ人の朝鮮戦争参戦記録写真が掲載されていた。 朝鮮戦争当時、ウクライナ軍のパイロットたちはソ連空軍所属でミグ戦闘機を操縦し、米空軍などと戦闘を繰り広げた。キーウの戦争博物館には、当時ソ連軍として参戦したミグ戦闘機のパイロットたちの写真とハングルで書かれた北朝鮮政府の表彰決議書、北朝鮮の国旗と北朝鮮住民の写真が展示されている。展示物の中には1985年8月10日に「朝鮮民主主義人民共和国主席金日成(キム・イルソン)」が「朝鮮解放40周年記念メダル」をウクライナ出身のソ連軍パイロットのクラマレンコ氏に与えた「朝鮮民主主義人民共和国メダル証」もあった。 ソ連が崩壊し、1991年にウクライナが独立した後、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術がウクライナの兵器工場から流出したという主張が出た。2017年8月14日、ニューヨーク・タイムズは国際戦略問題研究所(IISS)の報告書と米国情報機関の情報分析を引用し、このように報道した。北朝鮮がウクライナのドニプロにある軍需工場で生産されたロケットエンジン(RD-250系列)を闇市場で購入し、これを改良して2017年5月と7月にそれぞれ発射した中長距離ミサイル「火星-12型」と「火星-14型」に装着したということだ。 ウクライナはロシアの侵略戦争を批判し、韓国に兵器支援を要請しながらも、韓国が被害を受けた日本の侵略戦争には無神経な歴史認識を示した。9月3日、駐日ウクライナ大使館はXに「セルギー・コルスンスキー大使が靖国神社に参拝し、祖国のために命を失った方々を追悼した」という文と写真を投稿した。靖国神社の参拝が日本の戦争犯罪を擁護する行為という批判が高まったことを受け、駐日ウクライナ大使館は翌日、この投稿を削除した。 韓国の安全保障に全く貢献したことのないウクライナと違って、ロシアは1990年代、韓国が「新弓(シングン)」(携帯用地対空ミサイル)や「天弓(チョングン)」(中距離地対空ミサイル)のような誘導兵器を作るのに手を貸した。1991年にソ連が崩壊した後、ロシアの先端兵器の研究開発に関わる人々は深刻な生活苦に苦しんだ。彼らは給料が100ドルほどで、しかも数年間もらえなかったというという。当時、資金が必要なロシアと先端軍事技術が切実な韓国の利害関係が合致し、「天弓」と「新弓」の開発過程で韓ロの軍事技術協力が実現した。特に天弓の「コールドランチ」発射方式の開発にはロシアの技術力が大きく貢献したという。 コールドランチは、ミサイルが発射された後、一定高度まで圧力で押し上げられてから点火する方式で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)にも適用される。 その「天弓」と「新弓」こそがウクライナの望んでいる防空兵器だ。ロシアの技術が入っており、韓ロ技術協力で開発された兵器システムであるため、韓国がウクライナにこれらの兵器を供与した場合、ロシアがさらに強く反発する可能性がある。 韓国がウクライナに安保上の借りがないにもかかわらず、ウクライナがまるで借金取りのように韓国に兵器請求書を突きつける自信を示しているのは、尹錫悦政権の誤った判断に起因する。 ウクライナは、北朝鮮のロシア派兵を韓国とウクライナにとって共同の安保脅威としたが、両国が直面している安保脅威の性格は全く違う。ウクライナにとっては、北朝鮮のロシア派兵が直接的な軍事脅威だが、韓国にとっては、派兵後に見返りとして進められる北朝鮮とロシアの密着が大きな脅威だ。具体的には、朝鮮半島有事の際のロシアの介入、ロシアから北朝鮮への先端兵器と軍事技術の移転を阻止するのが韓国の課題だ。ウクライナにとっては北朝鮮がロシアを助けるのが問題だが、韓国にとってはロシアが北朝鮮を助けるのが問題だ。 韓国はロシアに派遣された北朝鮮軍の動向を綿密に把握し、以後ロシアが北朝鮮に与える見返りが具体的に何かを追跡監視し、朝ロ密着を遮断することに外交的努力を集中するのが賢明だ。ところが、国家情報院が先月、北朝鮮軍のロシア派兵を既成事実化したことで、大統領室は急いでウクライナへの兵器供与を検討する方針を明らかにした。これは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が北朝鮮軍のロシア派兵の本質を「北朝鮮のロシア支援」と取り違えたためだ。ウクライナはこれを逃さず、北朝鮮のロシア派兵を韓国とウクライナの共同の安保脅威とし、韓国に兵器供与を求めている。 主要国の大使を務めた元外交官は「ウクライナへの兵器供与は朝ロ密着を防ぐ韓国外交の対ロシア交渉のテコを自ら捨てる敗着」だと指摘した。さらに、「韓国がウクライナに兵器を供与すれば、ロシアはこれ以上韓国を気にしたり意識せずに朝ロ軍事協力を一層加速化させるかもしれない。ウクライナへの兵器供与は、朝ロ密着を牽制・遮断する効果は期待できない一方、朝ロ軍事協力を阻む堤防が崩れる副作用は明らかだ」と語った。 クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )