中国の南沙諸島埋め立ては、日本の「沖ノ鳥島」とどう違うの?
南シナ海の南沙諸島での岩礁埋め立てを批判された中国の王毅外相が、日本の「沖ノ鳥島」を持ち出して反論したことが話題となっている。中国の主張するように、南沙諸島で行われている中国の「岩礁の埋め立て」と、コンクリートで周囲を護岸工事した日本の「沖ノ鳥島」は、同列に語れる問題なのだろうか?その違いを整理したい。 [図表]国内外の世論に訴える中国の「世論戦」、深遠なる「三戦」とは?
「自国のやったことを省みよ」と中国
問題となった発言の舞台は、今月6日にマレーシアで開かれたASEAN地域フォーラムの閣僚会合。外務省公式HPによると、岸田文雄外相は会合で南シナ海での中国の南沙諸島埋め立てを懸念し、「暗礁・領海の外に位置する低潮高地、またはそれらを埋め立てた人工島は、国際法上、排他的経済水域や大陸棚どころか領海・領空を有しない」と発言したという。中国外務省の公式HPに公開されている王外相の発言録によると、これに対し王外相は以下のように反論した。 「日本は、人工島はいかなる法的権利を発生させないと主張している。しかし、まず日本が何をしてきたかを見てみよう。過去数年間で日本は100億円を”沖ノ鳥岩”に使い、小さな岩を棒鋼とセメントでできた人工島に変えた。日本はそれに基づき、200海里の排他的経済水域(EEZ)を超えて国連に大陸棚を主張したが、国際社会の主要国にとっては日本の主張が驚くべきものであり、それを受け入れなかった。日本は他国のことに口を出す前に、まず自国の言ったこと、やったことを省みたほうが身のためだ」 つまり、日本に南沙諸島の埋め立てを「人工島」であると批判された中国は、日本の「沖ノ鳥島」も「人工島」であり、「人のことをとやかく言う前に、自分のやってきたことを反省しろ」と言っているのだ。
沖ノ鳥島は人工島ではない
しかし、沖ノ鳥島は「人工島」ではない。そのことは中国も従来から認めており、この発言は従来の中国の主張とも矛盾している。 国連海洋法条約では、国の領有地が島、岩、低潮高地、人工島のどれに当てはまるかで、領有国にどんな権利が生まれるかが規定されている。