中国の南沙諸島埋め立ては、日本の「沖ノ鳥島」とどう違うの?
まず「島」とは、「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時にも水面上にあるもの」。一方で「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている(※これが「岩」の定義に当たるかには議論がある)。そして「自然に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するもの」は「低潮高地」とされる。 「島」の場合、周囲に12海里の領海と、200海里のEEZ、大陸棚が認められる。「岩」の場合、領海は認められるが、EEZと大陸棚は認められない。低潮高地と人工島はそれ自体の領海を持たず、このうちいずれも認められない。 さて、沖ノ鳥島の場合、日本政府は「島」であるとして、領海とEEZを設定している。これに対し、中国は従来から沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」であり、「沖ノ鳥岩」にはEEZは認められないと主張し続けている。つまり、中国は沖ノ鳥島を何の権利も生まない「人工島」だと主張したことはなく、少なくとも領海を持つ「岩」であると主張してきたのだ。沖ノ鳥島が日本の領土であり、領海を有していることについては、中国を含むどの国も異議を挟んでいない。 これに対して、中国の南沙諸島の岩礁埋め立ては領有権争いが解決していないばかりか、そもそも領海外の「低潮高地」に建てられた「人工島」であるとの指摘がある。大量の土砂で埋め立てられた今、岩礁が「低潮高地」に当たるものだったのかは判然としないが、アメリカ国際法学会が今年7月15日に発表したリポートでは、中国の実効支配する7つの岩礁について「低潮高地」だと指摘されており、そのため「どの7つにも領海は主張され得ない」としている。
軍事拠点化の懸念高まる南沙諸島
大小さまざまな島や岩、低潮高地の浮かぶ南沙諸島をめぐっては現在、中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイがその一部または全域の領有を主張している。中国は2014年から、実効支配していた7つの岩礁の埋め立てを開始した。