ウクライナ軍、ロシアの最新ミサイル艦も撃沈 黒海艦隊のクリミア「完全排除」近づく
ロシア海軍のカラクルト級ミサイルコルベット「ツィクロン」は、ロシア占領下クリミアにあるザリフ造船所で進水してから3年後の2023年7月に黒海艦隊で就役したばかりだった。 それからわずか10カ月後の19日、ロシアの2年3カ月にわたる対ウクライナ全面戦争の前線から240km離れたクリミア南西部セバストポリで、全長67mのツィクロンはウクライナ軍のミサイル攻撃によって沈められた。撃沈は20日の衛星画像で確認された。 ロシア海軍の幹部たちは黒海艦隊の先行きをますます憂慮しているに違いない。黒海艦隊の艦艇は、ロシア側が新造や他艦隊からの増援で補充する以上のペースでウクライナ側に破壊されているからだ。 黒海艦隊は、巡航ミサイルを搭載するカラクルト級ミサイルコルベットを7隻配備されることになっており、最初に就役したのがツィクロンだった。同級の別の艦「アスコリド」は昨年11月、黒海艦隊に引き渡される前に、クリミアのケルチにあるザリフ造船所がウクライナ軍のミサイル攻撃を受けた際に損傷した。 2022年2月にロシアがウクライナに対する戦争を拡大して以来、ウクライナ側は黒海艦隊を着実に弱体化させてきている。戦争拡大前に35隻かそこらあった大型艦のうち15隻ほどを撃沈し、ほか数隻を損傷させた。 地中海と黒海をつなぐボスポラス海峡の軍艦通航が管理国のトルコによって阻まれている限り、ロシアが縮小の一途の黒海艦隊を増強する唯一の方法は、小型艦を河川で黒海まで移すか、黒海に面した造船所で新艦を建造するしかない。 ウクライナ国防省情報総局が4月、バルト海沿岸のカリーニングラードで、ロシア海軍バルト艦隊のブーヤン級ミサイルコルベット「セルプホフ」に対する破壊工作を行ったのも、理由のないことではなかった。ブーヤン級のコルベットは、運河やヴォルガ川、ドン川、アゾフ海を経由して黒海に入ることができる小型艦のひとつだ。 撃破されたツィクロンと損傷したアスコリド以外の残り5隻の黒海艦隊向けカラクルト級コルベットは、クリミアもしくはヴォルガ川流域の造船所で建造中か引き渡し準備中となっている。だが、これらの艦も近い将来に黒海艦隊に加わったあと、攻撃に見舞われることは十分に予想される。 ウクライナは、自国で開発したり支援国から供与されたりした長距離の対艦兵器を数多く揃えているからだ。