<ドル覇権への挑戦>BRICSが仕掛ける共通通貨圏、トランプの反応は“過剰”なのか?
最大の武器となる中国の米国債売却
あとは減らしたとは言っても依然8000億ドル弱も存在する米国債の処遇をどうするのか。従前の漸減傾向を続けるのか、それともある時に売り浴びを決断するのか。仮に、米国経済を望まぬ金利上昇で痛めつけたいのであれば、後者の選択肢を取った上で、それを利上げ局面にぶつけるのは効果的かもしれない。 となると、「利下げの終わり」を経た26年以降が注目だろうか。もしくは共通通貨構想やサウジアラビアの通貨制度変更、それらに伴う資源決済通貨の移行など、BRICSとしての何らかの大きなアクションを起こすタイミングにぶつけるのも象徴的かもしれない。覇権交代を目論む中国にとって米国債売却はキャピタルロスという「返り血」を被りつつも、ドル一強体制に打ち込める最大の武器であることは間違いない。 とはいえ、そもそも特定通貨が1つの覇権を掌握するという体制が常態になるとも限らないだろう。ドルと人民元という2つの大国通貨の周りをそれぞれの友好国の通貨が衛生的に回るというマルチな体制もあり得る。 いずれにせよ、トランプ氏が陰に陽に懸念を示すように、BRICS首脳会議の挙動を荒唐無稽なものと一蹴するのはもはや適切ではない。国際金融秩序の歴史的な節目を注視するという目線をもって、調査・分析を進める姿勢を重視していきたい。
唐鎌大輔