【旧ビッグモーター店舗前街路樹問題】伐採の背景に「点検」、結果悪いと降格や給料半分に 元店長の男が法廷で語った“組織風土”
旧ビッグモーターの店舗前の街路樹が枯れたり、伐採されたりした問題。2023年に全国各地で次々と明らかになると、警察も捜査に乗り出す事態となった。 神奈川県でも川崎市の店舗前のツツジを伐採したとして、元店長の男A(33)と社員の男B(51)が器物損壊の疑いで起訴された。このうち、元店長の男の裁判が橫浜地裁で行われ、「罰金20万円」の有罪判決が言い渡された。 「やるしかない」――ツツジを伐採することに一度は戸惑った元店長の男にそう思わせた背景には、旧ビッグモーターにはびこる“組織風土”があった。(横浜支局・久保杏栞)
■点数化される月イチの「環境整備点検」
元店長の男Aの裁判は今年8月、横浜地裁で始まった。検察側の冒頭陳述によると、旧ビッグモーターには「環境整備点検」と名付けられた行事があり、この「環境整備点検」が発端となってツツジの伐採が行われたという。 「環境整備点検」は、店舗の運営に携わる「本部」に所属する社員が各店舗を訪れ、清掃が行き届いているかなどを評価する行事。頻度は月に1回。十数個の項目に沿ってチェックが行われ、150点満点で採点されるという。店舗の従業員たちはこの行事で指摘を受けるとすぐに改善を行い、社員全員が閲覧できる掲示板に写真を掲載し報告を行う仕組みだ。 しかし、この「環境整備点検」はただ単に店舗の状況を評価するためだけのものではなかった。点検の結果で、給料が減ったり、降格させられたりすることもあったという。店舗の従業員たちは、こうした事態になるのを避けるため、必死に掃除をするなどして月イチの「環境整備点検」に向けた対策をしていた。
■150点満点中“10点”―「木が邪魔だ。低い木は全部切った方がいい」
2022年9月某日、Aが店長を務める店舗でも「環境整備点検」が行われることになった。Aは休暇を取得していて不在。出勤していた従業員らで「環境整備点検」に対応することになった。 この日の点検の担当者は、社内でたった1人「環境整備点検推進委員」という職に就いていた本部社員のB。検察側の冒頭陳述によると、Bの点検は厳しく、低評価を受けやすいと従業員の間で有名だったという。Aも、Bの点検について、「ほかの人と比べると点数が取りづらい」「机が一直線になっていなければ点数が取れない」と法廷で証言している。 そのBはこの日、店舗に来て点検をはじめると、外の街路樹を指して従業員にこう伝えた。 「木が邪魔だ。低い木は全部切った方がいい」 この言葉を聞いた従業員は、Bの指摘をAに報告。点数は、150点満点中たったの10点だった。 その後の対応について、Aは法廷でこう証言している。 ============================== 弁護人:Bの指摘を受けて、あなたはどう対応をしたんですか? A:木を切ってよいか、川崎市に問い合わせをしました。 弁護人:なんという回答だったんですか? A:歩道に出ている部分の少しの剪定(せんてい)や背をそろえる程度はやっていいと言われました。木をすべて切っていいとは言われていないです。 (弁護人側の被告人質問より) ==============================