【旧ビッグモーター店舗前街路樹問題】伐採の背景に「点検」、結果悪いと降格や給料半分に 元店長の男が法廷で語った“組織風土”
Aが川崎市に問い合わせをした数日後、Bからあるメッセージが届いたという。 「歩道はこのイメージで!」――Bからのメッセ―ジには、木が少しも生えていない写真が添えられていた。Aは「市に確認し、できる限りやります!」と返した。市に確認したところで、伐採を許可してもらえるはずがないと思っていた。それを理由にうまくやりすごそうと思っていたと法廷で語っている。 しかし、Bから返ってきたのは思わぬ指示だった。「『市に確認』とかではなく、自分で動いてください」。
■横行する「減給」「降格」、ツツジの伐採を決意させた“組織風土”
「『市に確認』とかではなく、自分で動いてください」――Bからこう発破を掛けられたAは「やるしかない」と店の前のツツジを伐採することを決意した。その背景には、Bの指示を簡単に断れない“組織風土”があった。 ============================== 弁護人:Bの指示を拒むことは考えなかったのですか? A:「環境整備点検」の点数で降格があって、それが怖くて断れなかったです。当時、「環境整備点検」の点数の善しあしで降格がやられていて、自分も点数が悪くて降格したことがありました。給料も半分くらいになりました。 (弁護人側の被告人質問より) ============================== 「出入口見やすくなるよう写真部分なくします」――Aはツツジの写真と一緒にこうBに返事をすると、部下の従業員にのこぎりを買ってツツジを切断するように指示した。 「街路樹が店に悪い印象を与えるとは思わない」「とにかくBの指示に従った方がよいと思った」――裁判官から街路樹を伐採する意味について問われたAはこう答えた。“組織風土”は、Aにものごとの意味や善悪を考える力を失わせ、とにかく指示に従わなければならないという思考にAを陥らせていたのかもしれない。 切断が発覚することになったのは、それから半年以上が経った2023年夏。全国各地のビッグモーター店舗前で、街路樹をめぐる問題が明るみになりはじめると、川崎市も店の前の現地調査を実施。切断されていたことがわかり、市は神奈川県警に被害届けを提出した。