タコの知能は3歳児並み!?ハイタッチ、ダンスの披露も…飼い主だけが知る“海の賢者”の魅力をイラストで大解説【作者に聞く】
マダコのたくあんちゃんを飼育し、その飼育に関するイラストがSNSなどで注目を集めているもち(@mochi_deepsea) さん。 “マニアック海水魚・深海魚ガチ勢”と自ら名乗り、自宅では45センチのキューブオーバーフロー水槽を3台立ち上げ、その空間内での魚との触れ合い・コミュニケーションの取り合いの限界に挑戦している。そんなもちさんに、たくあんちゃんの魅力や心に残っているエピソードを聞いた。 【漫画】本編を読む ■タコの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい! 多数の魚関連のアパレル・グッズ・標本を蒐集し、自室をコレクションルーム・展示部屋にしているというもちさん。冷凍庫には200個体以上の深海魚をストックしているというのだから驚きだ。「お魚好きになったきっかけは、幼少期に両親に買ってもらった魚の図鑑。もともといろいろな生き物が好きだったのですが、図鑑のページをめくる中で、多様なフォルムのバリエーションがあるお魚の世界に惹かれていきました」 幼少期から生き物のシルエットに強い興味・関心があったもちさん。「特に図鑑の中の深海魚のページでは、これまで自分が見たことがある生き物たちとは全く異なる造形をしている魚たちに衝撃を受け、『直接この目で見てみたい!』と強く思うようになりました。そこから水族館に行ったり、深海魚の標本を見に博物館に行ったりして、どんどんお魚の世界にハマっていきました」 そんなもちさんはひょんなことからタコに魅了され、“タコ沼”にハマったそう。「タコあるある」をイラストで発信し始めたきっかけを聞くと、「タコの投稿をたくさんの人に見てもらえるようになって、海洋生物に興味がある方以外にも自分の投稿を目にしてもらう機会が増えたと感じたんです。タコの魅力をもっと多くの人に、タコについて詳しくない人にもよりわかりやすく伝えたいと考え、イラストで発信するようになりました」と答えてくれた。 特に反響の大きかったイラストは「タコの優しさ」というイラストだという。 「タコ=賢い、というイメージを持たれている方は多いかと思うのですが、どんな風に賢いのかについてはあまり知られていないように思います。そんな中で、飼い主に対して気遣いをしてくれることや、飼い主に褒められて得意げになって何回も褒められた行為をやってしまう愛嬌について、驚きの声や『かわいい!』という反響をたくさんいただきました」 投稿をきっかけに、多くの人がタコに興味を持って反応をしてくれたことがとてもうれしいそうだ。 ■うれしいと体の色や模様を変える姿に胸キュン! もちさんが飼育するマダコのたくあんちゃん。性格をひと言で表すと“お姫様タイプ”なのだとか。「わがままでプライドが高いです。食べたい餌を食べたいタイミングで食べられないなど、自分の思い通りにならないと不機嫌になります。いつも投稿を見てくれている方からは『たくあんお嬢様』と呼んでもらうこともあるくらいのお姫様っぷりです(笑)。ただ、私のことは大好きでいてくれるようで、触れ合いをしたり一緒に遊んだりするととても喜びますし、たくあんちゃんの希望をくみ取って行動してあげるととても上機嫌になります」 とてもきめ細かやかな肌つや、腕の先まで美しいところもたくあんちゃんの特徴だ。「タコは腕を極めてよく使うので、自然界では腕の先が切れてしまうこともしばしば。また、長期飼育が難しく、飼育下では怪我を治したりすることも難しいので、飼育されている中でコンディションが抜群に保たれたタコを見ることは稀です。つやつやの肌や腕が先端までそろった美しい姿はたくあんちゃんの特徴であり、タコの生きているときの美しさを伝えてくれる自慢の姿だなと思っています」 餌を食べたり触れ合いをしたりすると、うれしくなって目の周りの色が変わったり、体がまだら模様になったりするたくあんちゃんが大好きだそうだ。「タコは感情が体の色に出ることがあり、上機嫌なときは、目の周りの色と体の模様が濃くなります。ご飯を食べてうれしい、飼い主と触れ合ってうれしいということを全身で表現してくれているのが、とてもかわいくて大好きです!」 さらに、「一度食べ終わって捨てた殻をわざわざもう一度拾って口元に持っていき、ただただ殻をくわえて飼い主を見てきます。このような行動をとったあとに追加の餌をあげると、体をまだら模様にして大興奮で受け取る姿がユニークですね。おなかがいっぱいのときは巣穴にこもって出てこないので、明確に態度で『もう一つ食べたい』と訴えているのだと解釈しています」ともちさん。 飼い主に自分の要望を伝える行動を考えて実行する賢さが、とても興味深いと感じたそうだ。 ■タコの知性とコミュニケーション能力の高さにびっくり もちさんは餌やりのときのスキンシップや触れ合いをたくさん行い、たくあんちゃんとコミュニケーションを取っている。「餌を私の手から直接、受け取ってくれるんです。『餌をもらう』という自然界では絶対にしないような、信頼関係がないと成立しないコミュニケーションを取れている優越感に浸るのも、至福の瞬間です」 触れ合いは生きることに直結しない行為だが、そのような無目的なことを楽しんでくれるところにも、タコの知性の奥深さを感じるとも。 飼育する前は、これほど多様なコミュニケーションが取れるとは思っていなかったと言うもちさん。「私は別の水槽で海水魚も飼育しています。海水魚もとても賢くてスキンシップが取れる種類が多いのですが、それと比較してもタコの賢さはずば抜けていました。海水魚が1カ月でマスターする飼い主の手から餌を受け取るという行為を、たったの1日でやってのけてしまったり、学習速度も圧倒的に速いということがわかりました。また、タコは海水魚と違って骨がないので、いろんな動きができます。加えて色も形も変えられるので、表情の変化がとてもわかりやすかったです。だからこそコミュニケーションの幅が広く、感情もくみ取りやすいので、一緒に時間を過ごすのが想像していた以上に楽しい生き物でした」 とても賢く、コミュニケーション能力が高い一方、タコは非常に賢くストレスに弱いこと、水質に敏感であることなど、さまざまな理由から飼育が難しいと言う。「私はとにかく水質をよく保つことを意識しています。水質変化に敏感かつ、よく食べてよく老廃物を排出するため、水槽の水が汚れやすいという特徴があります。こまめに老廃物を除去して水換えを行うことを徹底して、タコにとって快適な環境を保てるように気をつけています」 また、難しいのは、一般家庭での飼育に関して未開拓のため、調子を崩してしまったときの治療法がわかっていないところ。そのため、タコが調子を崩すことのないように、スケジュールを立てて綿密に管理をしているそうだ。 ■現在の目標は「タコの魅力発信と長期飼育の実現」 ずばり、もちさんが思うタコの魅力を聞いてみた。「一言で表すなら、かわいいいところ(笑)。タコは人間の3歳児に匹敵するとも言われるほど賢いため、飼い主のことを認知してさまざまなコミュニケーションを取ってくれます。自由自在に変化するフォルムや体色を使って、感情を表現してくれることもあります。見た目がかわいいのはもちろんですが、そんな風に飼い主と一緒に時間を共有し、飼い主との関係性を築いてくれるタコという存在が、本当にかわいくて愛しいです!」 現在、もちさんは主に海の生き物のかわいさをSNSで発信。最近特に注力しているのは、気になる生き物の飼育と水族館巡りで、“かわいいを集める”をコンセプトに、生き物のかわいい瞬間・かわいい写りを大量に蒐集し、蒐集したかわいい瞬間の一部、そして自宅での飼育の一面を紹介している。 「今後はいろいろなタコに出会い、タコとできる限り多くの時間を過ごすことで、タコのかわいさをもっともっと知りたいと思っています。そして、タコの魅力をより多くの人により深く伝えられるようになりたいです。また、1匹のタコと長く一緒にいられるような飼育を実現したいですね」 タコは寿命が1年程度とされているが、捕獲されるサイズになるまでに半年ほどかかるという説も。つまり、飼育する段階で少なくとも寿命の半分ほどを経過してしまっている可能性が高く、このような背景も長期飼育が難しい一因となっていると言う。 「現在、たくあんちゃんは飼育103日(2024年7月8日時点)を達成しました。寿命を考えると、すでにかなり長生きをしてくれています。でも、たくあんちゃんと一緒に、まだまだコミュニケーションを取ってみたいなと思っています。これからも長生きしてもらえるように精一杯お世話をしていきたいです。飼育する中で見せてくれるタコの魅力的な姿を発信することはもちろん、将来的にはタコと一年間通して一緒にいることも夢ではない! というような飼育方法を開拓していきたいです」 取材・文=日高ケータ