中国がなぜEV化政策を推し進め、なぜタイで中国自動車組立工場が続々と建設されるのか? バンコクモーターショーの活況から理由が見えてきました
会期中の販売台数に異変が……
ショー期間中の、自動車販売台数上位ブランドの1位はトヨタで、不動の力を誇っているが、2位にBYD(比亜迪汽車)、3位ホンダ、4位MG(上海汽車)、5位三菱。以下、Changan(長安汽車)、AION(広州汽車)、GWN(長城汽車)、いすゞ、日産、マツダ、メルセデス・ベンツ、NETA(那吒汽車)、スズキ、フォード、起亜、現代、BMWという順(HEV含む)。 これまでタイでは圧倒的な強さを見せていた日本メーカーだったが、2024年は中国メーカーが上位に食い込む結果となった。 2023年の中国メーカーの出展は、MG、GWM、BYD、NETAで、この4社の出展だけでも驚いたが、2024年は4社に加えてAION(広州汽車)、CHANGAN(長安汽車)、ZEEKR(吉利汽車)、XPENG(小鵬汽車)が増えた。 2023年の筆者のレポートでは、「まだEV歓迎の空気感ではない」といった意味合いの内容を記したが、いざ2024年のモーターショーを見れば8つの中国EVメーカーがそれぞれに広い出展ブースを構えていた。モーターショー開催中のEVの販売台数は前年比約90%増。飛躍的に販売台数を伸ばす結果となった。 VIPデーや一般開催日にブースを回っても、中国メーカーに多くの人が集まり、熱心にクルマに触れ、あるいは観察しているのを見ることができた。そしてブースの裏手に回れば、商談テーブルが購入希望者で埋まっていた。 2024年に入って、世界規模のEV推進の動きがややトーンダウンしている。とくに積極的にBEV化を進めていた欧州自動車メーカーが軒並み完全BEV化の先延ばしを口にしだしたのだ。
EV推進の風は欧州とは別の動力源だった……?
そんな中、なぜタイではハイテンションにEV化を推進しているのだろう。その理由はいくつか考えられるが、最も大きな要因となっているのが中国だ。 中国が国を挙げてEVを推進している。欧州でEVが振るわないのは、単純に補助金が減額され、あるいはなくなって割高になったことが大きい。もちろん競争力のある内燃機関を作る技術力があるというのがベースにある。 一方、中国では自動車先進国並みの内燃機関を造るには、クリアしなければならないハードルが多い。しかしEVであればハンディがない。中国政府は、「支配的地位の確立を目指す産業分野のひとつ」としてEVを位置付けており、地方政府に政策の強化を求めている。 これをうんと意訳すると、「内燃機関で世界制覇はできないけれど、EVならそれができるので国を挙げて推進するぞ!」ということになる。 ASEANと中国の間で結ばれているゼロ関税協定からもわかるように、中国はASEAN地域にとても大きな影響力を持っており、これはEVに関しても例外ではない。ASEAN地域にいま吹いているEV推進の風は、じつは欧州とは別の動力源……つまり中国によるものなのだ。