前代未聞の994億円後払いはなぜ成立した? 大谷翔平の敏腕代理人が明かした真相「業界で大きな波紋を広げる契約だった」
世界に衝撃を与えたメガディールはいかにして生まれたのか。昨年12月に大谷翔平がドジャースと交わした巨額契約締結の舞台裏が明かされた。 【動画】MLB公式もクローズアップ! 大谷の妻・真美子さんのガッツポーズシーン 現地時間12月5日に米全国紙『USA Today』が大谷と、彼の周辺関係者への独占インタビューを実施。その中でドジャースと締結した北米スポーツ史上最高額と言われる10年総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)の契約が結ばれた背景を関係者たちが赤裸々に語った。 契約発表当時、何よりも驚きだったのは、「後払い」という契約形態だ。当時に「僕の年俸を全部繰り越したら、チームは勝ちやすくなるの?」とネズ・バレロ代理人に問いかけた大谷は7億ドルのうち97%を後払いにする契約にサイン。これによって10年間の年俸はわずか200万ドル(約2億9000万円)になった。 無論、国際的なスターであり、多額のスポンサー収入を得ている大谷だから結べた契約ではある。それでも、97%の後払いは前代未聞。賛否両論を巻き起こす歴史的なメガディールとなったのは間違いない。 FA交渉をし始めた当初を「球団にはショウヘイの本当の価値を理解してほしかった。フィールド外のスポンサー収益やブランドイメージの向上力などすべてを数字にする必要があった。いくつかの球団はショウヘイの魅力やビジョンを理解してくれなかった」と回想したバレロ代理人は、「彼ほどの無私無欲のアスリートは二度と見られないと思う」と続けている。 「業界でも、これまでにないほどの大きな波紋を広げる契約だった。ただ、ショウヘイにとって何よりも重要だったのは、自分が組織の足枷にならないこと。彼はとにかく『給料の全て、もしくは一部を延期したらどうなるのか? 僕の経済的には問題ないよ』と言うだけだった。彼にとっては、ドジャースが競争力を維持し続け、優勝し続けられるチームを作り上げるために、(金額がかかるトップレベルの)選手と契約できるようにすることが重要だった。それが彼のここでの究極の目標だった。ショウヘイはそのビジョンを実現したんだ」 大谷側からの後払いの申し出は、百戦錬磨のドジャース首脳陣にとっても驚きの事態だった。多くのスター選手獲得を成功させてきたスタン・カステン球団社長は「アンドリュー(・フリードマン編成本部長)から初めてその言葉を聞いたときのことを覚えている。私は『もう一度言ってくれないか?』と言ったよ。それが私の正直な反応だった。アンドリューは『それでうまくいくかな』と言ったんだ」と吐露。当時の心境を告白した。 大谷の後払いの効果は絶大だった。チームが課されるぜいたく税は7000万ドル(約105億円)から4600万ドル(約69億円)に減額。今オフもFAになっていたサイ・ヤング賞左腕ブレイク・スネルを6200万ドル(約93億円)が後払いの5年1億8200万ドル(約272億円)で獲得し、ポストシーズンで大活躍したトミー・エドマンとも2500万ドル(約37億円)が後払いとなる5年7400万ドル(約111億円)で契約延長にこぎつけた。 そのやり口は物議こそ醸しているが、違反行為には当たらない。バレロ代理人が言う通り、「大きな波紋を広げた」契約はドジャースが“銀河系軍団”を作り上げていく上では、常とう手段と化している。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]