スポーツを腐敗させる「賭博」の罠(わな)―デジタル社会に広がる依存症の危険
欧州ではサッカー選手が相次ぎ出場停止に
英国をはじめ、多くの欧州主要国では、民間業者であるブックメーカーでの賭博が公認されている。だが、そんな国々でも、ギャンブル依存症の危険は問題となっている。 昨年10月、サッカーのイタリア代表の相次ぐ違法賭博への関与疑惑が浮上した。セリエAの名門、ユベントスに所属するMFニコロ・ファジョーリ、ACミランからイングランドのニューカッスルに移籍したMFサンドロ・トナリ、ローマなどでプレーし、今はイングランドのアストンビラに所属するMFニコロ・ザニオロの3人が調査の対象となった。 ファジョーリとトナリはともにサッカーへの賭けが判明し、それぞれ7カ月、10カ月の出場停止処分を受けた。ザニオロは違法サイトへのアクセスを認めたものの、ポーカーやブラックジャックへの賭けだったとして、サッカー界での処分は免れた。ただ、3人はともにギャンブル依存症であると診断され、イタリア・サッカー連盟は依存症の治療プログラムを受けることを義務づけたという。 イタリアのガゼッタ・デロ・スポルト紙のインタビューでザニオロは、「私は間違いを犯した。しかし、サッカー選手は孤独であることが多い。私たちはそのことに苦しんでいる」と打ち明けた。 世間の注目を集め、巨額の富を手にするプロ選手である。街に出ても、プライバシーはなく、ファンたちに追い掛け回される。人前での不用意な行動や発言が、ネット上で拡散し、誹謗中傷を受ける。そんな嫌な思いをしないために家にこもりがちになり、スマホやタブレット片手にゲームをし、ギャンブルにのめり込む。ザニオロはそんな生活を告白している。 他にも、イングランド代表FWでプレミアリーグのブレントフォードに所属するイバン・トーニーが賭博規則違反を繰り返し、8カ月間の出場停止処分を受けた。トーニーは約4年間で232件もの賭博に関与しており、ギャンブル依存症であることを認めたという。 欧州サッカー界での賭博を巡る不祥事は、ギャンブル依存症の危険がトップ選手にも広がっていることを示している。自分の競技人生を左右することが分かっていてものめり込んでしまうほど、判断力を狂わせるのだ。