遠隔教育や遠隔医療…途上国のベストプラクティスを衰退する地方に!地方の学生と世界をつなぐとはどういうことか?
かつて花街として栄えた新潟市の古町は、小洒落た雑貨屋やカフェがある一方で、商店街の半分近い店に営業の気配がないシャッター街となっている。少子高齢化と人口減少が進む日本の地方都市ではどこにでもある光景だ。 【写真】「グローバル化した現在、日本だけが豊かさを維持し続けることは難しい」と語る伊藤氏。だからこそ、地道な国海外支援が必要だという だが、そんな中で地域に根を張りながら、世界を見据える人材を育てようとする大学がある。国際地域学部、国際経済学部、人間生活学部を擁する新潟県立大学は、2009年に県立女子短期大学から共学の4年生大学になった時、初代学長として国際政治学者の故・猪口孝氏を招いた。 新潟出身の猪口氏は「地域に根ざし、世界に羽ばたく」をスローガンに、世界に目を向ける人材を育てようと工夫を重ね、学生総数1500人のこの小さな地方大学の基礎を築いた。とはいえ、内向きと言われる若者、まして地元にとどまる学生に国際社会を意識してもらうのは容易なことではない。地方で学ぶ学生と世界をつなぐのはどういうことか、大学院国際地域学研究科の伊藤晋研究科長に聞いた。(聞き手:草生 亜紀子、フリーライター) ──新潟県立大学は地元の学生が多いのですか? 伊藤晋氏(以下、伊藤):新潟県内出身者と県外からの学生が大体半々くらいです。入試の日程が国公立大学の前期後期日程と違うので併願できること、県立で学費が安いこともあり、県外からも多くの学生が集まっています。 ──伊藤さんは大学と大学院で国際開発や国際協力を教えていらっしゃるのですね。 伊藤:はい。 ──海外の開発や支援の仕事に学生たちは興味を持っているのですか? 伊藤:関心を持つ学生はたくさんいます。授業にもきちんと取り組んでいます。真面目で優秀な学生が多いですね。でも、卒業後に国際開発や支援を仕事に選ぶかというと、なかなかそこまで至っていません。もっと挑戦して欲しいと思うのですが‥‥。 ──卒業後の進路はどういうところですか? 伊藤:県立大学なので県内就職率を意識しないといけないところはあります。地元企業、公務員、教員等が多いです。 ただ、ここで教えていてよく思うのは、国際支援は何も国連やJICA(国際協力機構)やNGOで働いたりするだけではないとうことです。地元企業や自治体で働きながら、普通に暮らしながらも、地元での多文化共生に携わったり、フェアトレードの商品を購入したりするなど、できることはいくらでもあると学生に伝えています。